JAJT338 August 2021 IWR6843
Jitin George
インダストリ 4.0 のオートメーション化へのシフトは、工場における、産業用ロボット、協働ロボット、サービス ロボット (無人搬送車や自律走行搬送ロボット) の急激な増加に拍車をかけました。多くの場合、これらのロボットは人間の近くで作業をするので、衝突の可能性を認識するための高度なセンシング機能と安全機能を搭載し、身体的負傷や設備の損害のリスクを最小化する必要があります。
産業用ロボットは、組み立てや溶接のような反復作業を実行するために、製造業で幅広く採用されています。産業用ロボットは 1,000kg までの重量物を持ち上げることができ、10m/s 以上の速度で確実に動作するので、人間が同じ作業を実行する場合に比べて効率と製造生産性が高いです。産業用ロボットは通常、人間を保護するためにケージやフェンスの内側で動作し、人間がその中に立ち入った場合にロボットを安全に停止させるための各種センサを搭載しています。
安全ケージは人間を産業用ロボットから保護するための従来型アプローチとして採用されてきましたが、この慣行には固有の短所もあります。第 1 に、ケージはかなりのスペースを占有し、より多くのロボットを工場の現場に追加しようとするメーカーに制限を加えることになります。第 2 に、人間が安全ケージの中に立ち入るたびにロボットを停止させると、サイクル タイムが長くなります。産業用ロボットの使用状況という観点では、サイクル タイムはロボットが一連の動作を完了させるのに要する時間です。また、サイクル タイムは、ロボットのエンド エフェクタの最高速度にも依存します。サイクル タイムを最適化すると、生産性の向上につながります。
ある事業会社が最近、自社工場のアップグレードの一環として、仮想的な安全保護ソリューションを視野に入れ、テキサス・インスツルメンツに連絡を取りました。人間の安全性を低下させずに自社の産業用ロボットのサイクル タイムをできるだけ短く抑えるために、人間が存在している状況で自社ロボットを完全に停止させる代わりに、速度を緩やかにして動作させることを同社は希望していました。
より多くの産業用ロボットを同じ領域に配置し、製造生産性向上のためにサイクル タイムを最適化するという全体的な目標を達成できるように、同社は従来の安全ケージを廃止し、仮想的な安全保護機能で置き換えることを求めていました。これは非接触型センサ ソリューションであり、各ロボット アームの周囲に警告ゾーンと危険ゾーンを規定し、人間が存在する場合にそのことを検出して労働者の安全を確保します。図 1 に、現状および望ましいレイアウトを示します。
この非接触型センサ ソリューションは、危険な状態を引き起こす可能性のある障害に関連するリスクを最小化できるように、機能安全であることが必須です。仮にそのような障害が発生した場合、人間の負傷や環境または設備の損害につながるおそれがあります。テキサス・インスツルメンツは、このような課題を解決できるように各種ミリ波 (mmWave) レーダー センサを設計してきました。機能安全の観点から、テキサス・インスツルメンツは、広範囲に及ぶハードウェアおよびソフトウェア開発を行った後で、IWR6843 などのミリ波デバイスを開発し、その後、TÜV (Technischer Überwachungsverein) SÜD によるデバイス認証を取得してきました。また、IWR6843 センサは図 2 に示すようないくつかの機能安全メカニズムも組み込んでいます。これらは、偶発的ハードウェア障害への対処能力に関して最大で SIL 2 の水準をコンポーネント レベルで満たせるようになっており、IEC 61508 が課している必須の診断カバレッジを実現しています。
テキサス・インスツルメンツのミリ波をベースとする安全保護機能には、工場の現場で発生するごみ、煙、照明条件のような環境要因への耐性もあります。機能安全に対応する LiDAR ベースの競合製品と比較すると、ミリ波ベースの製品はコストがより低く、フォーム ファクタがより小さいという特長があります。これらの理由で、この会社は自社の設計に関する課題を解決するために、IWR6843 センサの採用を希望しました。一方で、同社はレーダーや安全性のエキスパートではないので、レーダー ベースの開発や、自社の最終製品の機能安全認証プロセスに関する追加のガイダンスを必要としていました。レーダーや機能安全に関する専門知識がなく、しかも量産化を急いでいたため、同社は機能安全準拠センサをベースとするサード パーティーのターンキー ソリューションを検討しました。
このプロジェクトのリード エンジニアは、産業用ミリ波レーダー センサ関連のサード パーティー検索ツールをダウンロードした後、ターンキー カテゴリの中で Inxpect 社の IWR6843 ベースの SBV-01 安全レーダー センサを見つけました。SBV-01 は、アクセス検出機能、再起動防止機能、動的 3D カバレッジ領域をサポートしているので、同社の用途との適合度が高いセンサでした。Inxpect 社は SBV-01 モジュールの SIL 2 認証プロセスをすでに完了していたので、最終顧客はこのモジュールをすぐに統合し、SIL 認証済みシステムをより迅速に実現することが可能でした。安全認証は多くの場合、長い期間を必要とすることがあります。多くの状況で、1 年またはさらに長い期間に達します。Inxpect 社は技術要件と SIL 2 認証の両方に適合するターンキー ソリューションを提供することで、開発労力の低減、認証プロセスの短縮、短期間での量産化を実現できました。
テキサス・インスツルメンツのミリ波レーダー センサを活用して産業用オートメーション アプリケーションを強化する方法については、産業用ミリ波レーダー センサのサード パーティー検索ツールをご覧ください。このツールを使うと、各種製品カテゴリの探索、関連パラメータによるソート、サード パーティーへの直接の問い合わせを行うことができます。