JAJT341 August 2024 TCAN3403-Q1 , TCAN3404-Q1
自動車は、安全性、快適性、利便性を強化して、より高度な機能を搭載するように進化しています。機能が増加すれば、より複雑なエレクトロニクスが必要になります。そうすると、電力効率の重要性が強調されます。電力効率が高ければ、航続距離の延長と運用コストの低減を実現できます。その結果、半導体メーカーは、マイクロコントローラ (MCU) などの電気部品の標準的な電源電圧を 5V から 3.3V に低下させています。多くの車載システムでは、現在、5V CAN (Controller Area Network) トランシーバ用としてのみ 5V 電源レールが必要ですが、他のすべてのコンポーネントは、12V、24V、48V いずれかのバッテリから派生した 3.3V 以下の電源レールを使用できます。3.3V 電源で動作する CAN トランシーバがあれば、5V レールが不要になり、MCU とのシームレスなインターフェイスも容易になります。
現在生産中の車載用 CAN ネットワークの場合、電磁適合性 (EMC) 規格に合格した唯一のトランシーバは、やはり 5V 電源を必要とします。図 1 に、CAN コントローラをマイクロコントローラに統合した 5V CAN ノードの概略ブロック図を示します。3.3V の CAN トランシーバを使用すると、マイクロコントローラとトランシーバの両方に 3.3V 電源を使用できるため、全体の部品コストと基板面積を削減できます。
3.3V CAN トランシーバは、産業用市場では数十年にわたって採用されてきました。しかし、車載市場へ移行するにあたって、設計者は、既存の 5V CAN トランシーバとの相互運用方法、および厳格な車載 EMC 要件に合格する方法という 2 つの課題に直面します。この記事では、テキサス・インスツルメンツの 3.3V CAN トランシーバを活用してこれらの課題を解決する方法を説明します。
5V CAN トランシーバが CAN ネットワークの現行ソリューションであるため、3.3V CAN トランシーバは、既存のネットワークおよびアーキテクチャ内で完全に相互運用可能であることが不可欠です。ティア 1 の自動車サプライヤにとって、相互運用性は特に重要です。ティア 1 のサプライヤは、通常、CAN ネットワーク全体の設計を自分で統括していないからです。これらのサプライヤは、自らが設計する CAN バスの一部が 3.3V と 5V のどちらのトランシーバに接続されるのか把握できません。3.3V と 5V の CAN トランシーバ間で相互運用性を確保できれば、このリスクは軽減します。5V および 3.3V の CAN トランシーバが完全に相互運用可能であれば、通信バス上のすべてのノードを 3.3V に変更する必要はありません。サブシステムの設計者は、CAN バス上の単一のノードについて、3.3V トランシーバが利点をもたらすかどうかを柔軟に判断できます。
テキサス・インスツルメンツの 3.3V CAN ファミリは、国際標準化機構 (ISO) 16845-2 によるテストに合格しています。このテストは、すべての 3.3V トランシーバの同種ネットワークと、16 個の CAN ノードのうち 4 つが 3.3V トランシーバで、残りの 12 個の CAN ノードが業界で認められている他の 3 つの 5V CAN トランシーバを組み合わせた異種ネットワークを対象としています。テキサス・インスツルメンツの車載用 3.3V TCAN3403-Q1 および TCAN3404-Q1 トランシーバは、この相互運用性テストに合格しています。
CAN トランシーバの EMC 性能は、デバイス自体によって生成される放射と、システムに存在する干渉への耐性という 2 つのパラメータによって測定されます。TCAN3404-Q1 および TCAN3403-Q1 は、EMC 性能に関して国際電気標準会議 (IEC) 62228-3 規格に準拠しています。
放射とは、電磁エネルギーの放出です。理想的には、放射が少なければ、通常の動作において、付近にある他の部品の性能に影響を与えないことが保証されます。耐性とは、付近にある他の部品から放射などの干渉があっても、デバイスが誤動作せずに機能する能力のことです。第三者検査機関が実施している試験は、車載アプリケーション向けの最も厳格な試験の 1 つであり、CAN トランシーバの放射および耐性の性能について特性を評価します。
市場で入手可能なデバイスが EMC 規格の策定に影響を及ぼしたので、5V CAN トランシーバが一般的になりました。これに対して、3.3V CAN トランシーバは、すでに存在する規格に適合するという課題を克服するのに苦労してきました。TCAN3404-Q1 および TCAN3403-Q1 は、同種または異種のネットワークで EMC 要件に合格する能力を備えており、この障壁を克服しました。
TCAN3403-Q1 および TCAN3404-Q1 は、厳格な車載用 EMC 要件に合格し、5V CAN トランシーバと完全に相互運用可能です。3.3V が車載部品の標準電源電圧になっている状況で、3.3V CAN トランシーバは柔軟な設計を可能にし、システム内の電源数を減らして消費電力とコストを削減します。
3.3V CAN トランシーバの詳細な技術情報については、テクニカル ホワイト ペーパー『車載認定済み電磁適合 3.3V CAN FD トランシーバ』をご覧ください。
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