JAJT342 August   2024 TRF1108

 

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    1.     4mm2 で、差動からシングルエンドへの変換およびゲイン
    2.     高密度の使用事例
    3.     マッチングされた入力と出力
    4.     性能の最適化
    5.     まとめ
    6.     その他の資料
    7.     商標

Srinivas Seshadri、Keyur Tejani、Carey Ritchey

従来の無線周波数 (RF) 送信シグナル チェーンは、通常、D/A コンバータ (DAC) を使用してベースバンド信号を生成します。この信号は、RF ミキサと局部発振器を使用して、必要とする RF 周波数にアップコンバートされます。RF DAC 技術の進歩により、今では、必要とする RF 周波数で信号を直接生成できるようになり、RF 送信シグナル チェーンの設計と複雑さが大幅に簡素化されます。

高周波 RF DAC は平衡差動出力を備えていますが、RF 送信チェーンとアンテナはシングルエンドです。従来、RF エンジニアはパッシブ バランと中間段 RF ゲイン ブロックという 2 つのデバイスを使用して、差動からシングルエンドへ (D2S) の変換を実行し、RF 信号の出力を増幅していました。しかし、パッシブ バランには、広い帯域幅で動作する必要がある場合に、プリント基板 (PCB) の占有面積の増大、挿入損失の増大、マッチングやゲインの低下、位相の不均衡など、いくつかの制限があります。RF パッシブ バランは、DC または DC 付近での動作もサポートしていません。

D2S RF アンプは、差動信号をシングルエンド信号に変換し、広い帯域幅にわたってゲインを提供できるモノリシック デバイスです。この記事は、従来のパッシブ バランおよび RF ゲイン ブロックによる手法と比較して、D2S RF アンプを使用する利点の概要を説明します。

図 1 に、DAC バッファおよびパワー アンプ (PA) プリドライバとして使用される TRF1108 D2S RF アンプを示します。

 DAC バッファおよび PA プリドライバとして使用される、差動からシングルエンドへの RF アンプ TRF1108 を示す、簡略化された RF トランスミッタ シグナル チェーン図 1 DAC バッファおよび PA プリドライバとして使用される、差動からシングルエンドへの RF アンプ TRF1108 を示す、簡略化された RF トランスミッタ シグナル チェーン

4mm2 で、差動からシングルエンドへの変換およびゲイン

RF DAC 出力で D2S 変換を実行するパッシブ バランは、特に広帯域を必要とする場合、寸法が大きくて高価になります。パッシブ バランのフットプリントが大きいため、PCB の面積が増加するとともに PCB の配線が長くなり、RF 性能が制限されます。特に、マルチチャネル RF DAC と組み合わせて使用する場合にそうなります。さらに、広帯域パッシブ バランは挿入損失も大きいため、信号電力の損失を補償するために高性能の RF ゲイン ブロックが必要です。

TRF1108 D2S RF アンプは、D2S 変換を実行してゲインを得るモノリシック デバイスです。D2S RF アンプは DC~12GHz の帯域幅に対応しており、DC から数 GHz までの広帯域 DAC バッファ アプリケーションで使用できます。TRF1108 は、PCB の占有面積がわずか 2mm x 2mm と小さいので、PCB の面積を削減できて、配線の短縮と RF 性能の向上につながります。

図 2 に、TRF1108 の PCB 占有面積が 2mm x 2mm であり、必要とする PCB 面積が削減できて、TRF1108 DAC39RF10 評価基板において、配線の短縮と RF 性能の向上につながる状況を示します。

 TRF1108-DAC39RF10 評価基板 (TRF1108-DAC39RFEVM)図 2 TRF1108-DAC39RF10 評価基板 (TRF1108-DAC39RFEVM)

高密度の使用事例

レーダー システムの設計者は、必要とする距離、分解能、アンテナ サイズに基づいて動作周波数を選択します。広い帯域幅をカバーする RF DAC を D2S RF アンプと組み合わせることにより、RF 送信シグナル チェーンに対する変更を最小限に抑えながら、ハードウェア設計をさまざまな周波数帯域アプリケーションで再利用できます。

RF DAC と D2S RF アンプを組み合わせると、デジタル ビーム フォーミングを採用した高密度フェーズド アレイ レーダー アプリケーションで多くの利点を実現できます。これらのアプリケーションでは、複数の DAC 出力を多数のアンテナに接続し、それぞれが互いに位相シフトされた RF 信号を送信します。マルチチャネル RF サンプリング DAC とトランシーバは、複数の DAC を単一のダイとパッケージに統合しています。この統合は、システム設計を簡素化し、ハードウェアのサイズと複雑さを低減するのに役立ちます。しかし、このようなマルチチャネル RF DAC が実現する最高密度を効率的に活用するには、小型で高性能の D2S RF アンプが必要です。

マッチングされた入力と出力

従来、RF DAC と組み合わせて使われていた広帯域パッシブ バランは、良好な入力および出力反射損失を維持するのが困難であり、反射損失も入力および出力終端インピーダンスの影響を受けやすいものです。この影響により、所定の RF 帯域の中でインピーダンスが変化し、送信される信号に望ましくないゲイン変動が生じます。TRF1108 の差動入力は 100Ω にインピーダンス マッチングされています。TRF1108 のシングルエンド出力は 50Ω に広帯域マッチングされているため、反射損失が改善され、広い RF 帯域幅にわたって非常に平坦なパスバンド応答が得られます (図 3 を参照)。

図 4 は、TRF1108 の入力と出力がマッチングされているため、RF DAC との組み合わせにより、100MHz から 8GHz まで平坦なパスバンド応答が得られることを示しています。

 スミス チャートにおける TRF1108 の入力および出力 S パラメータ図 3 スミス チャートにおける TRF1108 の入力および出力 S パラメータ
 100MHz~8GHz の TRF1108 DAC39RF10 周波数応答図 4 100MHz~8GHz の TRF1108 DAC39RF10 周波数応答

性能の最適化

広帯域パッシブ RF バランは挿入損失が大きいので、RF DAC からの最大信号電力レベルが低下します。パッシブ バランの後にシングルエンドの高性能 RF ゲイン ブロックを設けることにより、挿入損失を補償し、RF 信号の電力レベルを高める必要があります。シングルエンド RF ゲイン ブロックは、通常、2 次の非直線性性能が低く、信号帯域幅が複数オクターブをカバーしている場合には、結果として生じる歪みをフィルタで除去できません。それに加えて、広帯域バランのゲイン不均衡と位相不均衡は、さらなる不均衡につながり、RF 信号の 2 次非直線性が劣化します。

TRF1108 などの D2S RF アンプには、ゲインおよび位相不均衡の性能を改善するのに役立つフィードバック技法が組み込まれています。入力が差動であるという特性により、シングルエンド RF ゲイン ブロックに比べて 2 次歪みが改善されています。TRF1108 D2S RF アンプは、複数オクターブ RF 送信アプリケーション向けに 2 次非直線性が改善されています。

まとめ

RF DAC の技術的進歩により、レーダー、ソフトウェア無線、RF 試験および 測定機器において、柔軟で広帯域の RF アプリケーションが可能になりました。マルチチャネル DAC と RF サンプリング トランシーバに複数の RF DAC を統合することで、送信シグナル チェーンの設計が簡素化され、マルチ送信 RF およびフェーズド アレイ アプリケーションにおける大きな PCB 面積の必要性が減少します。

TRF1108 などの D2S RF アンプは、DC~12GHz の RF 信号帯域幅を提供します。これらの製品は、RF DAC の広い RF 帯域幅と性能を補完します。TRF1108 シングルチップ D2S RF アンプは、従来のパッシブ バランと RF ゲイン ブロックを改良したものです。PCB 面積の低減、RF 配線長の削減、マッチングの向上、性能の強化を実現しています。その結果、高密度、高性能、フレキシブルな RF 送信設計を実現できます。

その他の資料

商標

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