Mujtaba Saeed
電源の小型化と高効率化の要求の高まりによって、窒化ガリウム (GaN) を使った電力段が急速に普及しつつあります。AC/DC アダプタ市場では、メーカー各社はよりパワフルだがより小型のアダプタによって USB Type-C® コネクティビティの成長を拡大させるため、GaN フライバック コンバータをいち早く活用しています。
この状況は刺激的ですが、電源設計者はシステムのコストと複雑さの両方を同時に低減する必要もあります。フライバック コンバータ設計における最新の革新は、効率を犠牲にすることなくデバイス バイアス用補助巻線を不要 (「auxless」) にすることを可能にしました。
この記事では、テキサス・インスツルメンツの統合型 GaN フライバック コンバータ UCG28826 を使って、AC/DC アダプタの設計上の課題を克服する方法を紹介します。
優れたフライバック設計を実現する上での共通の障害は、コンバータ バイアスを生成する必要性によって生じます。図 1 に示すように、一般的なフライバック電源は補助トランス巻線によってコンバータ バイアスを生成します。それに伴い、追加のバイアス電力変換回路はコスト、部品点数、電力損失の増加の原因になります。
各種負荷要件に対応するために可変の出力電圧を供給する USB パワー デリバリ (PD) アダプタの場合、コンバータ バイアスの生成に伴う好ましくない影響はより明らかです。補助巻線の電圧は出力電圧に正比例するため、出力電圧がその最小値になった際にバイアス電源電圧 (VCC) が最小動作電圧よりも高く維持されるように巻数比を設定する必要があります。したがって、出力電圧が最小値から最大値に変化すると、補助巻線の電圧が何倍も増加し (図 2 を参照)、VCC ピンに高電圧ストレスを生じさせます。そのため、効率を低下させ、ソリューションの複雑さを増大させる、追加のバイアス電力変換段を使う必要性が生じます。
UCG28826 では、自己バイアス管理を使うことで、この課題を解決しています。図 3 に示すように、自己バイアスにより、スイッチ ノードとの接続を通じて本デバイスはバイアス エネルギーを効率的に収集できます。次に、本デバイスは、収集されたエネルギーを転送し、VCC コンデンサを充電します。電源は、補助巻線もバイアス電力変換回路もその他の関連部品も使わずに、高効率のバイアス電源管理を実現できます。auxless フライバック設計は、効率の向上と同時に、システムのコスト、サイズ、複雑さの低減に役立ちます。
より集積度の高いコンバータを使う場合に共通する欠点は、設計の柔軟性が低下することです。たとえば、EMI (電磁干渉) を低減するためのよく知られた手法として、MOSFET (金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ) のゲートと直列に接続した抵抗を利用することがあります。抵抗値を調整すると、それに応じてスイッチ ノードのスルーレートが調整されるため、フライバックによって生成される EMI を簡単に微調整できます。もちろん、MOSFET をフライバック コンバータに内蔵すると、この手法は使えないため、調節が簡単には行えず、EMI 準拠を達成するのに必要な設計期間が長くなります。
UCG28826 には、設計を構成するための多数の選択肢が備わっています。専用構成ピンの 1 つに接続する抵抗の値を調整することで、ゲート駆動強度を含む数種類のパラメータを変更できます。そのため、MOSFET のターンオン時のスイッチ ノードのスルーレートを調整することで、EMI を微調整できます。
日常生活での USB Type-C エコシステムの普及に伴い、より小型、パワフル、高効率な AC/DC アダプタの開発に対する要求が高まり続けています。UCG28826 auxless GaN フライバック コンバータなどのデバイスを使うと、そのような電源を開発できると同時に、システムのコストと複雑さを低減できます。
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