JAJY142 January 2024 BQ79731-Q1 , DRV3901-Q1 , DRV3946-Q1 , TPSI2140-Q1 , TPSI3050-Q1
最も基本的なレベルとして、マイクロコントローラは BMS 内で主に 2 つの役割を担っています。それは、センサに接続してデータを受信し、その情報を車両ネットワークに伝達するということです。これら 2 つの機能によって、機能の安全性と、充電状態などの重要な診断情報が BMS にもたらされます。今日のマイクロコントローラは、より高度なセンシングとコンピューティング、より高度なネットワーキングが求められるため、これら 2 つの主な機能の両方においてより高いレベルに達しています。先進的なマイクロコントローラによって、バッテリから車両の他の部分に高品質のデータを送信できるようになり、車両内で起きていることをより正確に把握できるようになりました。
BMS 内のマイクロコントローラ動作に関する高度なシナリオを見てみましょう。バッテリの有用性を最大限に引き出すのに必要なインテリジェンスを処理する複雑なアルゴリズムが求められるため、計算能力が増大しています。バッテリのサイズが大型化すると、測定が必要な個々のセルの数も増えます。電圧レベルが高くなり、バッテリ内に蓄えられる全体的な電力も高くなります。これらはいずれも、これまで以上に多くの信号が入力されることを意味しており、車両アーキテクチャがドメイン制御からゾーン制御に移行するにつれて、マイクロコントローラのパッケージ サイズの大型化と、入出力数の増加が必要になることを示しています。
このような高度なアルゴリズムやセンシングのニーズに関する要件を満たす 1 つのアプローチとして、コア コンピューティングのパフォーマンスを向上させることが挙げられます。従来のマイクロコントローラは、シンプルな電流と電圧の測定や温度の測定を行う BMS において、シングル コアで 100 MHz で動作できたかもしれません。今では、最大 1GHz で動作するマルチコア デバイスがあり、システム内で計算し、動作することができます。設計者は、デジタル信号プロセッサとフィールド プログラマブル ゲート アレイを活用して、大幅に高速化された計算エンジンを構築することができます。テキサス・インスツルメンツの Arm® Cortex® ベース 32 ビット マイクロコントローラ製品ラインアップは、高性能で電力効率の優れたデバイスを取り揃えており、システムのニーズに応えることができます。
バッテリ ECU から他の車両部分への通信も、ますます複雑になっています。システムは診断を行ったり、予測機能や、バッテリ負荷に応じてタスク タイプを切り替えるなどの動的な変更を行う必要があるかもしれません。たとえば、車両が高速走行している場合、バッテリは全負荷の状態になります。このような場合に、診断やセルの更新などのタスクを実行するのは非効率的です。ところが、車両の充電中は、これらのタスクを実行して、ワイヤレスまたはイーサネットのようなプロトコルで有線通信して、車両ネットワークにデータを送り返すための時間とシステム帯域幅が確保できます。この場合、従来の CAN や CAN-FD バスに比べてはるかに高いデータ レートを実現できます。バッテリ内のモジュール化の程度に応じて、BMS 内でも通信が必要になることがあります。
BMS 内のマイクロコントローラにとって最も重要な基準は、機能の安全性を確保することです。ネットワーキング レベルがますます向上しているため、セキュリティの重要性も高まっています。マイクロコントローラは、システムの安全性要件とセキュリティ要件を満たすために、車載安全性インテグリティ レベル (ASIL) D をサポートし、ハードウェア セキュリティ モジュールを内蔵する必要があります。AM263P4-Q1 マイクロコントローラ などのデバイスはマルチコアであり、高度なネットワーキング用のペリフェラルを備え、センシングとアクチュエーションの IP の品質も高く、コンピューティングに適した非常に高い動作周波数を持っています。また、マイクロコントローラは、安全性の向上と開発期間の短縮を促進するために、オートモーティブ オープン システム アーキテクチャ (AUTOSAR) など、オープンで標準化された車載ソフトウェア アーキテクチャをサポートする必要があります。