JAJA521A July   2017  – March 2022 INA138 , INA139 , INA168 , INA169 , INA226

 

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ハイサイドの電源電流センシングが必要な場合、電源の最大電圧定格を理解することが極めて重要です。最大電源電圧は、電流検出アンプの選択の要因となります。電流検出アンプのコモンモード電圧は、電源の最大電圧を超えている必要があります。たとえば、48V 電源上で電流が測定され、トランジェント電圧が 96V を超えない場合、最大コモンモード電圧として 96V をサポートする電流検出アンプを設計する必要があります。同様に、400V 電源では、コモンモード電圧として 400V をサポートする電流検出アンプを選択する必要があります。

高電圧のハイサイド電流検出を行うソリューションのシステム・コストは、目標として 1% 以内の精度を達成する必要があることを考慮した場合、高価になる可能性があります。コモンモード電圧が 90V を超える場合、絶縁テクノロジの電流検出アンプしか選択肢がない場合が多く、このテクノロジは高価で、BOM が大量になる可能性があります。以下では、コモンモード電圧が低い電流検出アンプに、抵抗、ダイオード、PMOS FET などいくつかの安価な外付け部品を追加することにより、最大定格を超える拡張を行う、いくつかの技法について紹介します。

抵抗を使用するコモンモード分割電圧

高電圧のハイサイド電流センシングを監視するための最も単純な方法は、低電圧の電流電流アンプと外付けの入力分割電圧を使用する設計です。たとえば、80V のアプリケーション用に 40V コモンモード電圧アンプを選択すると、80V の入力コモンモードを分割し、40V のコモンモード電圧に降圧する必要があります。この電圧分割は、図 1-1 に示すように、外付けの分割抵抗により実現されます。これは単純な設計手法で、トレードオフが大きくなります。アンプのゲイン誤差と CMRR は、外付けの入力分割抵抗の精度と一致に依存します。ゲイン誤差と CMRR 誤差を別にしても、外付け抵抗の許容誤差から入力電圧の不均衡が発生し、出力誤差が増大します。この誤差は、抵抗のドリフト係数仕様によっては、温度に応じて増大します。出力誤差を最小化する技法の 1 つは、精度 0.1% で一致した、温度ドリフト係数の低い外付け分割抵抗を使用することです。

GUID-656F5519-BEE8-4D10-A0CA-B177C8358A94-low.gif図 1-1 分割抵抗によるコモンモード範囲の拡大

電流出力アンプのコモンモード範囲の拡大

分割電圧には出力誤差と性能低下の点で深刻な問題があるため、別の方法として図 1-2 に示すように、電流出力アンプのグランド基準電圧を、高い電圧コモンモード・ノードにシフトすることもできます。
図 1-2 では、INA168 の定格コモンモード電圧である 60V を超える電圧について、電流検出が可能です。この技法は、適切な PMOS FET (Q1) を設計することにより、60V を超える任意の電圧に拡大できます。

図 1-2 では、ツェナー・ダイオード DZ1 が電源電圧をレギュレートして、電流シャント・モニタが範囲内で動作するようにし、この電圧は電源電圧に相対的に移動します。予測される電源電圧範囲 (通常は 5.1V~56V) にわたって、IC1 と Q1 の組み合わせについて十分な動作電圧を供給できるよう、DZ1 が選択されます。DZ1 のバイアス電流が、IC1 の最大静止電流よりも大きな値になるように、R1 を選択します。図 1-2 に示す INA168 の静止電流仕様は 400V で最大 90µA と規定されています。DZ1 のバイアス電流は 400V において約 1mA で、IC1 の最大電流を十分に上回っています (バイアス電流の値は、R1 での消費電力を 0.1W 未満に制限するよう選択されています)。図に示すように、P チャネル MOSFET の Q1 を接続して IC1 の出力電流をグランド電位、またはそれより低くカスコードします。トランジスタ Q1 の電圧定格は、合計電源と DZ1 との差分を数ボルト超えている必要があります。これは、Q1 のソースで上向けに電圧スイングが存在するためです。IC1 の負荷抵抗 RL は、IC1 が単独で使用される場合と同様に選択します。Q1 のカスコード接続により、IC1 を通常の 60V 定格を大幅に超えて使用できるようになります。図 1-2 に示すサンプル回路は、400V で動作するよう特に設計されています。

GUID-A53E0975-8220-48A4-AE18-7A893E1D4255-low.gif図 1-2 400V システム用のハイサイド DC 電流測定

電力監視用のコモンモード電圧範囲の拡大

高電圧システム (40V~400V) でのシステム最適化と電力の監視は、正確に実装されれば、システムの総合的な電力管理および効率の向上を実現できます。電流、電圧、およびシステムの電力情報は、障害を診断するための予防的手順の実行や、システムの合計消費電力の計算に役立ちます。障害の監視や電力の最適化は、高電圧のシステムにおいて早期の障害が発生した場合に役立ち、またシステムのシャットダウンおよびウェークアップを最適化することにより、消費電力を大幅に減らすことができます。

36V のコモンモード電圧電力監視デバイスの INA226 を使用して、40V~400V のシステムをサポートするアプリケーションの方式を、図 1-3 に示します。図 1-2 は、高精度のフルスイング・オペアンプ OPA333 を使用して、シャント抵抗の両端で電圧を検出し、高精度の抵抗 R1 にミラーリングする例を示しています。OPA333 は、電源ピン間の 5.1V のツェナー・ダイオードを使用し、400V に昇圧されます。このオペアンプは、電流フォロワ構成で、600V P-FET のゲートを駆動します。測定の下端でも正確な読み取り値を得られるよう、リーク電流の低い P-FET が選択されます。R1 の両端の電圧は、FET のドレイン電流を設定し、FET のドレインの抵抗 R2 を R1 と一致させることで、R2 の両端に VSENSE 電圧が発生します (VR2)。電流モニタ INA226 の入力は、電流センシングのため R2 の両端に接続されます。このため、電流モニタは VSENSE の周囲のコモンモード電圧のみを参照し、これは一般に 100mV 未満なので、電流モニタが高いコモンモード能力を持つ必要はありません。INA226 は I2C インターフェイスを持つ高精度の電流、電圧、電力モニタであるため、電流、電圧、電力の監視用に選択されています。また INA226 は、36V 未満のバス電圧を検出できます。ここで採用されているバス電圧は 400V なので、高電圧のバスを INA226 のコモンモード範囲内まで降圧するため、分圧器が使用されます。この場合、64 の比率が選択され、バス電圧の LSB がそれに応じてスケーリングされ、実際のバス電圧読み取り値が得られます。この場合、80mV に変更された LSB を使用できます。バス測定の精度を維持するため、分圧器には高精度の抵抗が選択されます。

GUID-4B7D4303-9922-4422-A66F-FD3C23DF0BF7-low.gif図 1-3 高電圧の電力監視
表 1-1 その他の推奨デバイス
デバイス 最適化されたパラメータ 性能のトレードオフ
LMP8645HV 帯域幅:900kHz、パッケージ:SOT-23-6 スルーレート:0.5V/µs
INA220 MSOP-8 パッケージ、I2C インターフェイス、選択可能な I2C アドレス ゲイン誤差 (1%)、シャントのオフセット電圧:100µV
INA139 パッケージ:SOT-23、帯域幅:4400kHz、コスト オフセット電圧:1mV