このアプリケーション・レポートでは、テキサス・インスツルメンツの BAW テクノロジー、BAW 共振器と発振器回路の統合によるスタンドアロン発振器の作成、BAW 発振器を使うことの利点 (水晶発振器との比較) について詳しく説明します。水晶発振器に対する BAW 発振器の主な利点には、柔軟性の向上、温度安定性の向上、ジッタ性能の向上、電源ノイズ耐性の向上、振動安定性の大幅な向上、耐衝撃性の大幅な向上が挙げられます。
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水晶振動子発振器 (XO) は、1920 年代に発明されて以来、1 世紀以上にわたってタイミング・リファレンス市場を支配してきました。これらの水晶発振器は、ローエンド・アプリケーション (リアルタイム・クロック) からハイエンド・アプリケーション (複雑な無線、GPS、ミリタリー / 航空) まで幅広い製品で有効性が見出されてきました。ここ数 10 年間、移動体通信と新たに出現した IoT 市場が、水晶振動子と同等以上の性能を維持しながら、消費電力が小さく、小型で、統合しやすい新しい共振器技術の探索を推進してきました。この 10 年間に、各種のマイクロ共振器技術を利用した複数のスタンドアロン発振器製品が消費者市場に投入されました。テキサス・インスツルメンツは、2012 年に、先進のタイミング・アプリケーションを目指して独自のバルク弾性波 (BAW) 共振器テクノロジーの開発を開始しました。また、2018 年以来、業界最高性能のジッタ・クリーナ (LMK05318 ファミリ) と世界で初めて商品化された水晶振動子を使わない BLE 無線 (CC2652RB ファミリ) を含む複数のシステム製品を発表してきました。これらのデバイスの量産経験を生かして、テキサス・インスツルメンツは今回、BAW を使ったスタンドアロン発振器製品を発売しました。
テキサス・インスツルメンツの BAW 共振器テクノロジーは、2.5GHz での高 Q 共振を発生させるために圧電変換を利用しています。この共振器は、上下の電極に挟まれた四角形の領域によって定義されます。高音響インピーダンス層と低音響インピーダンス層を交互に配置することで、共振体の下に音響ミラーを形成し、基板への音響エネルギーの漏れを防止します。さらに、デバイスを汚染から保護し、パッケージ材料へのエネルギーの漏れを最小限に抑えるため、これらの音響ミラーは共振器スタックの上に配置されています。この独自のデュアル・ブラッグ音響共振器 (DBAR) によって、共振器を囲む高価な真空キャビティがなくても効果的に励起することを可能にしています。結果的に、テキサス・インスツルメンツの BAW 共振器は、表面汚染物質の吸収による周波数ドリフトに影響されないため、標準的な発振器フットプリント (3.2mm × 2.5mm および 2.5mm × 2.0mm) の非気密プラスチック・パッケージ内に発振器回路と共に直接配置できます。