JAJY143A February 2024 – March 2024 DRV5055-Q1 , LDC5072-Q1 , TMAG5110-Q1 , TMAG5111 , TMAG5115 , TMAG5170-Q1 , TMAG5231 , TMAG6180-Q1
しばらく車を運転していたとしても、おそらくあなたは、ハンドルにもブレーキ システムにさえも、車種によって大きな違いがあるとは感じないでしょう。これは設計の賜物です。ハンドリングの改善によりドライバーの快適性は向上していますが、一般的には、これらのシステムの操作感が比較的変わらないように維持されてきたのは、車の年式に関係なく、ユーザーの使い勝手が変わらないようにするためです。
しかし、これらのシステムで使用される技術は時間の経過と共に進化を遂げ、位置センサはこの進化の大きな部分を占めてきました。
現在では、超音波、光学、磁気、静電容量性、誘導性など、多くの種類の位置センサが利用できます。位置検出集積回路 (IC) は物体の動きを検出し、マイコン (MCU) が処理および制御するのに適した電気信号に入力信号を変換します。このホワイト ペーパーの文脈では、位置センサについて言及する場合、IC センサはホール効果、異方性磁気抵抗 (AMR)、誘導性技術を使用しているものとします。図 1 に、これらの 3 種類のセンサの基本的な機能を示します。
ホール効果技術では、強磁性体の中に電流が誘導されます。磁界 (B 磁界とラベル付けされています。図 1 を参照) を印加すると、電流の流れに垂直なホール電圧が発生します。
AMR センサの抵抗は、磁界が印加されると減少します。また、この異方性という特徴は、AMR センサが、印加された磁界の方向の影響を受けることを意味します。
誘導性センサは、自分自身の磁界を生成するためにセンサ コイル (インダクタ) を使用しています。センサ コイルは、金属ターゲットに発生する渦電流によって生成される磁界と結合します。
このホワイト ペーパーでは、位置検出における現在の 4 つの動向について説明します。具体的には、システムの電動化、信頼性と安全性の向上の要求、最終製品全体の小型化、レアアース材料からフェライト材料への移行です。設計者は、IC センサの改良に関する最新情報を理解することで恩恵を受けることができます。これらの IC センサは、従来よりもはるかに小さいパッケージに封止されていながら、精度と感度の大幅な向上、分解能と機能の向上、消費電力の低減を実現しています。
Manny Soltero
1 トレンド 1:システムの電動化 | 位置センサは、電動モーターおよび電動パワー ステアリング (EPS) システムなど、進化を続ける車載システムのあらゆる場所で、複雑な角度を高精度で測定します。 |
2 トレンド 2:信頼性および安全性向上の要求 | 機械的システムから磁気センサへの移行は、摩耗や損傷を低減すると同時に、機能安全の必要性を高めます。 |
3 トレンド 3:最終製品全体の小型化 | 高感度の磁気センサと高集積化により、精度と分解能の低下を含む小型化に伴うトレードオフに対応できます。 |
4 トレンド 4:レアアース材料からフェライト材料への移行 | 磁気センサにおいて、フェライト材料はレアアース材料に代わる豊富でコスト効率の優れた代替品ですが、フェライト材料を採用する場合、その弱い磁界と温度ドリフトを補償する機能が必要です。 |
自動運転、ユーザー体験向上の要求、温室効果ガス排出量低減の要求により、自動車の電動化が進み、位置センサを含むより多くの半導体デバイスを自動車に搭載することが必要になりました。これが第 1 のトレンドです。
熱効率は、電気自動車 (EV) にとって最も重要です。電動ポンプは、オイルや冷却水などの冷却剤を車両全体に循環させ、各種システム レベル温度を抑制します。これらのシステムを制御するのは、複数の電子制御ユニット (ECU) です。EV の電源が投入されると、マイコンは温度を監視することで、特定のシステムに十分な冷却剤がポンプで送り出されたかどうかを判断できます。電動ポンプのインクリメンタル ロータリー エンコーダに高分解能ホール効果センサを使用することで、マイクロプロセッサは過熱イベントに対してはるかに効率的に応答できます。高帯域幅の TMAG5110-Q1 などのデバイスは、高感度でありながら低レイテンシの出力が可能なため、設計者はより柔軟にセンサを配置できます。
ステアリング コラムの設計は OEM (Original Equipment Manufacturer:相手先ブランド受託製造業者) ごとに異なりますが、最も一般的な実装では、複数の制御モジュールが接続され、ウインカー、ヘッドライト、ワイパー、クルーズ コントロール、スクロール ホイールなど、複数のスイッチおよびボタン制御機能が管理されます。自動運転や快適性のために、以前は機械的に実装されていたこれらの機能は、磁気機能も備えた電気的ソリューションになりました。ほとんどのアプリケーションにおいて、TMAG5170D-Q1 と TMAG5173-Q1 は複雑な角度を高精度で測定できるため、ASIL (Automotive Safety Integrity Level:車載安全性インテグリティ レベル) B、さらには ASIL D のシステム レベルにも適合できます。図 2 に、機械式接点を 3D ホール効果センサ開発ボードに置き換えるために組み込まれた OEM ステアリング コラム制御モジュールを示します。
モーター位置検出は、電気モーターを最適な効率で確実に動作させるための電気モーター設計の基本です。電力効率の要求値が高まるにつれて、モーター シャフトの正確な回転位置を高精度で監視する位置センサの性能の期待値も高まります。トラクション インバータ内のマイクロプロセッサと電力段は、モーターの位置を把握することで、モーター コイルに正確な量の電流を供給し、より効率的にトルクを管理できます。その課題は、モーターがフルスピード (100,000rpm 以上) で動作している最中に、定格温度範囲全体にわたって、あり得る最も高い精度 (約 0.5°) で角度を測定することです。LDC5072-Q1 誘導性センサ (誘導性リゾルバとも呼びます) は、本来備わっている浮遊磁界に対する耐性を考えると、この用途に適しています。この技術のもう 1 つの利点は、磁石が不要であることです。図 3 に、トラクション インバータを上部に取り付けた電気モーターを示します。
自動車の電動化は位置センサの多くの使用事例を生み出しました。その中で最も普及しているのは間違いなく電動パワー ステアリング (EPS) です。EPS が進化し続けるのに伴い、モーター位置センサとホイール位置センサの精度と分解能の要求値も高まっています。EPS システムにおいて、TMAG6181-Q1 はモーターの回転子の位置を 0.4° という最小限の角度誤差で計測でき、2µs 未満のレイテンシで最大 100,000rpm に対応できます。一方、TMAG5170D-Q1 はステアリング ホイールの 3D 位置の判定に有効です。ハンドル角センサは、車両の最適な動作と制御を実現するため、ECU にデータを送信します。
電動化は、自動車だけでなく、電動バイク、電動アシスト付き自転車、電動スクーターなどの交通システムにも及んでいます。これらの製品は長年にわたって使われてきましたが、位置センサを必要とするモーター整流、ケイデンス、ホイール速度検出に新たな進歩が見られます。電動バイクには、注目に値するいくつかの新しいトレンドがあります。