図 1 に、BAW 共振器技術の構造を示します。この構造には、金属の薄膜と、機械的エネルギーを閉じ込めるその他の層との間に挟まれた圧電性材料の薄い層が含まれます。BAW は、この圧電変換を利用して振動を生成します。
CDC6C および LMK6C LVCMOS BAW 発振器ファミリは、エネルギー インフラ設計でそのまま置き換えることができる部品として使用できます。
図 2 と図 3 に、BAW 発振器が組み込まれたスマート メーター アプリケーションの基本的なブロック図を示します。BAW 発振器は、各種の周波数や電源電圧、パッケージ サイズに柔軟に対応できるため、クロック供給のための代替手段として全体システムのあらゆる場所で使うことができます。絶縁型 ADC のメイン クロックに同期が必要な場合は、LMK05318B などのネットワーク シンクロナイザを使用できます。
MEMS や水晶発振器と比較した場合の BAW 発振器の主な利点の 1 つは、非常に優れたジッタ性能です。図 4 に、LMK6C (LVCMOS) BAW 発振器の 25MHz 出力クロックのジッタ性能を示します。ADC のメイン クロックのジッタ性能を改善すると、優れた信号対雑音比が得られます。
テキサス・インスツルメンツの BAW 発振器ファミリは 1.8V~3.3V の電源電圧をサポートしており、標準の 4 ピン DLE (3.2mm×2.5mm)、DLF (2.5mm×2mm)、DLX (2mm×1.6mm)、および DLY (1.6mm×1.2mm) パッケージで供給されるため、小型の基板設計におけるスペースの節約が可能です。幾つかのパッケージ サイズの代表的な水晶発振器のレイアウトと比較した BAW 発振器のレイアウトを 図 5 の左側に示します。水晶振動子では、共振周波数を調整してアクティブ発振を維持するために最大 4 つの外付け部品が必要です。CDC6C や LMK6C などのアクティブ発振器は、電源フィルタリングのために必要なコンデンサが 1 つだけなので、部品点数が減り必要なレイアウト面積を大幅に削減できます。さらに、PCB パターンによる寄生容量はアクティブ発振器の周波数精度に影響を与えないため、水晶振動子よりもはるかに離れた場所に配置できます。
BAW 発振器は、温度安定性と振動感度の点で高いレベルの信頼性を備えています。図 6 は、-40℃~105℃の温度範囲での BAW 発振器の性能を水晶発振器と比較したものです。温度範囲全体で、BAW 発振器は ±10ppm の周波数精度を有しています。
図 7 に、BAW 発振器の振動に対する感受性を示します。BAW 発振器の振動感度は 1ppb/g (標準値) であり、これは水晶発振器による設計の感度、5~10ppb/g よりも大幅に優れています。
BAW 発振器は、他のテクノロジーに比べて EMI 特性が優れています。図 8 は、CDC6C BAW 発振器と MEMS ベースの発振器の 550MHz~800MHz 周波数帯域での CISPR 11 の放射エミッションを比較したものです。この測定は 8.192MHz のクロック周波数を使用し、AMC131M03 の評価基板で実施しました。BAW 発振器は、クロック周波数の偶数高調波で放射する電力が大幅に減少し、奇数クロック高調波でのピーク電力も小さくなります。