ヒューマン マシン インターフェイス (HMI) システムは決して新しい技術ではありませんが、世の中をより豊かにする潜在能力や、人間と電子機器との関わり方の可能性の多くは、まだ解明されていません。車載用システムや産業用システムで HMI システムの機能を拡張するには、開発者は、人工知能 (AI) のような高度な機能を搭載できる可能性を持つ、スケーラブルでオープン ソース、なおかつ信頼性の高い設計を自由に行える必要があります。テキサス・インスツルメンツの Arm® ベースの高集積プロセッサは、開発者が高度な HMI システムに高性能な処理機能を実装できるように設計されています。
この記事は、HMI 設計においてプロセッサの高集積化がもたらす利点と、設計者が適切なプロセッサを選定する際の選定基準について説明します。
非常に多くの集積オプションが存在するため、プロセッサを選択する際にはトレードオフを検討する必要があります。多くの場合、特定のプロセッサが、設計の機能、コスト、消費電力に関する要件をすべて満たすことはありません。こうした要件に対応するスケーラビリティを備えながら、特にソフトウェアにおいて設計効率を最大化できるプロセッサ ファミリがおそらく最適な選択肢でしょう。HMI 設計でプロセッサを選択する際の 5 つの考慮事項の概要を、以下に説明します。
より大型で高解像度のディスプレイやマルチディスプレイには、より多くの情報処理能力が必要とされるため、システムの消費電力や熱管理に増加につながることがよくあります。グラフィックス処理ユニット (GPU) などの特殊なプロセッシング コアを使用することで、このような電力効率設計上の考慮事項を軽減することができます。スケーラブルな製品提供により、設計者は、特定のシステムに必要な電力と放熱能力を備えたデバイスを使用できます。これらの製品は、特定の設計に適した GPU 性能を備えた幅広いデバイスを提供するように設計されています。また、GPU が不要な場合は GPU を搭載しないオプションも用意されています。表 1 示すように、AM623 (GPU 非搭載)、AM625、AM62P、AM67X (GPU 搭載) などのテキサス・インスツルメンツの HMI アプリケーション プロセッサ ファミリは、設計者がより高解像度で没入感のあるグラフィックスを設計に追加しながら、与えられた消費電力や熱の範囲内で最高のパフォーマンスを実現することができます。
コア HMI | スマート HMI | |||
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AM62 | AM62Plus | AM67、AM67A | AM68、AM68A | AM69、AM69A |
1~2 台のディスプレイ | 1~3 台のディスプレイ | 1~3 台のディスプレイ | 1~4 台のディスプレイ | 1~4 台のディスプレイ |
小型 GPU (8 GFLOPS) |
大型 GPU (50 GFLOPS) |
大型 GPU (50 GFLOPS) |
大型 GPU (50 GFLOPS) |
大型 GPU (50 GFLOPS) |
– | – | AI (4 TOPS) |
AI (8 TOPS) |
AI (32 TOPS) |
– | – | – | 高性能コンピューティング (25K DMIPS) |
巨大コンピューティング (100K DMIPS) |
より多くのデータを視覚化して処理し、より迅速な意思決定の実現が必要であるため、より大型で高解像度のディスプレイが使用されています。インテリジェンスとアナリティクスを使用するスマート ディスプレイは、より多くのデータを、より的確かつ実用的な形式でユーザーに提示し、この設計上の課題に対応しています。スマート HMI アプリケーションに統合されたアナリティクス用にシステムを最適化するために、設計者は、適切な処理能力とハードウェア アクセラレータを搭載したデバイス、および包括的なソフトウェアとツールを含む開発プラットフォームを選択できます。
分析機能や機械学習をディスプレイに追加することで、直観的なジェスチャ制御、予知保全、ユーザーまたは状況に適応したディスプレイをより多くのシステムに搭載できる可能性があり、ユーザー体験を向上させることができます。これらの新しい機能を追加するには、より多くの処理能力が必要になります。テキサス・インスツルメンツの統合型プロセッサの製品ラインアップは、電力効率を最適化するための専用アクセラレータと、その他の機能を処理する追加のプロセッサ コアを搭載しています。GPU の選択と同じく、設計者は、アクセラレータの搭載および非搭載にかかわらず、さまざまな製品ラインナップの設計要件を効率的に満たすためのオプションを必要とする可能性があります。テキサス・インスツルメンツの AM67X ファミリのデバイスには、AI アクセラレータ搭載オプションと非搭載オプションがあり、設計者は、統合プラットフォームに対応した複数のプロセッサ オプションを利用することで、設計全体のスケーラビリティと再利用性を高めることができます。
利用可能なディスプレイの種類、サイズ、解像度が増えるにつれて、期待される性能を達成するために複数の物理的なインターフェイス オプションが必要になります。高解像度の画面には、低電圧差動信号 (LVDS)、ディスプレイ パラレル インターフェイス (DPI)、モバイル産業用プロセッサ インターフェイス (MIPI)、ディスプレイ シリアル インターフェイス (DSI) と、それらをサポートする性能を備えたプロセッサが必要です。ユーザー体験向上のために複数のディスプレイを駆動するには、同じプロセッサ上に複数のインターフェイスが必要です。画面のサイズ、解像度、設計コストは、プロセッサを選択する際の重要な選択基準の一つです。たとえば、単一画面設計の低コストのシステムの場合、必要なのは DSI だけかもしれません。一方、より高解像度のディスプレイや複数のディスプレイを搭載した、より高機能なシステムでは、LVDS インターフェイスや DPI を搭載した画面が必要になることがあります。機能が向上するにつれて、システムは他の環境と通信するために、USB3、Peripheral Component Interconnect Express (PCIe)、カメラ シリアル インターフェイス (CSI) などの高速インターフェイスを必要とします。テキサス・インスツルメンツの AM6x ファミリは、進化する設計要件を満たすために、さまざまな構成でこれらの多様なインターフェイスをサポートしています。
ハードウェア設計の柔軟な選択肢により、設計者はコストなど複数の要素に合わせてシステムを最適化できます。一方で、こうした選択は、拡張や保守が困難な断片的なソフトウェア アーキテクチャにつながる可能性があり、設計効率が低下し、場合によっては設計コストの上昇につながります。設計者やリーダーシップ チームは多くの場合、設計作業全体を最適化するために、HMI 製品全体の総所有コストに目を向けて、GPU をサポートするグラフィック ライブラリやアクセラレータをシームレスに活用する AI フレームワークなどの機能の追加をサポートできる、拡張性と柔軟性に優れたソフトウェア アーキテクチャを選択する必要があります。テキサス・インスツルメンツのソフトウェア開発キット (SDK) は、Linux® や Android™ のような一般的なオープンソース オペレーティング システム向けで、システムの効率的な開発を支援する強固な基盤を提供します。製品ラインナップ全体にわたって拡張される基本的なソフトウェア要素は、一度作成すれば、設計全体にわたって展開することができます。たとえば、複数の製品で必要なセキュリティ機能などがこれに該当します。セキュアなワイヤレス (OTA) 更新機能を複数作成および管理したり、基盤となるソフトウェアの違いによって異なるセキュア ブート フローを管理したりすることは、まさに断片化であり、設計効率を低下させ、コストと時間を増加させます (さらに多くのコストがかかります)。
図 1 は、テキサス・インスツルメンツの AM6x ファミリが、コストのかかる断片化を伴わずに、ハードウェアの違いに合わせて拡張できる効率的なソフトウェア製品を開発するための基盤となるソフトウェアを提供していることを示しています。
ユーザーがスマート ディスプレイの優れた新機能を楽しむためには、設計者がそれらの機能を実際の製品に統合する必要があります。専門知識と能力によって使いやすさはチームごとに変わりますが、考慮すべき共通の実現要因があります。必要な専門知識が少なくて済むような一般的なタスク向けのツールは、使いやすさを大きく向上させるものとなります。基板の設計やレイアウトから量産プログラミングに至るまでの設計プロセス全体にわたる特定のタスク向けのツールに加えて、テキサス・インスツルメンツは、スマート ディスプレイへの AI の実装を簡略化するためのオンライン ツール Edge AI Studio を無償提供しています。テキサス・インスツルメンツの資料とトレーニング リソースを併用することで、設計者は設計プロセスの際に課題に容易に対応できるようになります。
すべてを網羅するものではありませんが、これらの 5 つの考慮事項は、設計者が拡大する製品ラインナップにマルチディスプレイ スマート HMI をシームレスに追加する際に役立つでしょう。これにより、ヒューマン マシン インターフェイスにおける技術革新がより現実的なものになります。
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