Sreenath Unnikrishnan
過去 10 年間の自動車業界における最大の変化は、ソフトウェア定義自動車への移行です。従来の自動車の設計では、パワートレインやインフォテインメントなどの特定の機能専用のハードウェア ベースのサブシステムが使用されていました。自動車モデルを迅速にアップグレードする必要がある状況において、「ゾーン」とも呼ばれるモジュール形式のフレキシブルなサブシステムを構築して、複数の機能を統合することにより、効率化を実現できます。専用のドメイン制御ユニットの代わりに、自動車は、機能を統合した 2 ~3 個のゾーン制御ユニットをサポートすることになります。
ゾーン アーキテクチャへの移行には、従来の溶断ヒューズを、eFuse と呼ばれる半導体スイッチに置き換えることが含まれます。eFuse には、個別部品の溶断ヒューズと比較していくつかの利点があります。リセット可能な出力を備えており、故障後に交換する必要がなくなるため、車両設計者はその設置場所を最適化できます。簡単にアクセスできる必要がないので、電源から負荷までのケーブル長を短縮できます。 また、eFuse は遮断時間電流特性が改善されており、ばらつきがはるかに少ないため、ケーブルの直径、重量、ワイヤ ハーネスのコストを削減できる可能性があります。パワー マネージメント システムに追加機能を備えることで、予防診断や故障診断の改善が可能になり、電子システムの消費電力を管理して、電気自動車の航続距離を最大化するのに役立ちます。
図 1 に、溶断ヒューズから eFuse への移行を示します。
この記事では、構成可能な eFuse を使用してソフトウェア定義自動車アーキテクチャに迅速に移行する方法を説明します。
コネクテッド カーは、高度なセンサ機能からヒューズ素子に至るまで、システムの状態を常時読み取る能力が必要です。さらに、ゾーン プラットフォームでは、給電対象の負荷によってヒューズの要件が変化する場合の柔軟性が求められます。 eFuse (たとえば TPS2HCS10-Q1) は、シリアル ペリフェラルインターフェイス (SPI) などのインターフェイスを使用して、負荷要件に応じてスイッチを動的に構成したり、負荷診断を読み取って判定を通知したりすることによって、これらの問題を解決するのに役立ちます。eFuse は保護機能および診断機能を構成するのに外付けの受動部品を必要としないため、機能が追加されているにもかかわらず、全体のシステム コストと部品数が少なくて済みます。
SPI を介して複数のスイッチおよび負荷障害診断機能を連続的に利用できるので、マイクロコントローラ (MCU) のオーバーヘッドを低減できます。デバイスに内蔵されている A/D コンバータ (ADC) により、SPI 経由で完全なデジタル診断を読み出すことができるため、MCU ベースの ADC で電流および電圧出力を読み取る必要がありません。外付け部品なしで eFuse が出力電圧を検出するとともに、バッテリへの短絡または開放負荷フォルトを検出する方法を 図 2 に示します。
ソフトウェア定義自動車に移行する際の開発で最も困難な要素の 1 つは、ソフトウェアとファームウェアの開発を合理化して、一貫性のあるシステムを実現することです。さまざまな自動車モデルに対して複数のシステムを検証することによって、サイクル時間とコストの両方が増加します。eFuse は、出力負荷特性が異なる複数のモデル バリエーションの情報をプログラムしたり読み取ったりするための共通インターフェイスを維持しながら、小電流負荷から大電流負荷までスケール化して対応できます。ソフトウェアの構成、制御、診断のためのデジタル インターフェイスを備えているため、MCU の入出力 (I/O) ピンの要件が低減され、I/O エクスパンダの追加コストとプリント基板 (PCB) 面積を削減できます。
ソフトウェアで設定可能な eFuse が適切な選択肢になる理由は何でしょうか?
TI のスマート ハイサイド スイッチ製品のラインアップは、電界効果トランジスタを内蔵し、多様な負荷電流に対応する広いオン抵抗範囲を備えているため、ゾーン アーキテクチャの設計上の課題を軽減します。TPS2HCS10-Q1 eFuse は、SPI 通信、低消費電力モード、I2T 電流制限、インテリジェントなコンデンサ充電などの機能を備えており、開発および技術の課題に対処できます。これらのスイッチはパワー ディストリビューションの進化を実現すると同時に、アクチュエータ ドライブ アプリケーション向けの保護機能と診断機能を提供します。
TPS2HCS10-Q1 をはじめとする TI の eFuse は、スマート パワー ディストリビューションやソフトウェア定義ゾーン ECU のシステム ニーズを満たすと同時に、開発のコスト、スペース、時間に関する効率を向上します。日ごとにスマート化および安全性向上が進んでいるので、将来、自動車内の従来型ヒューズを交換する必要がなくなる可能性があります。
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