Proteus の設計:Amazon 初の自律型移動ロボット
ケース スタディの概要
Amazon Robotics は自社初の自律型移動ロボット (AMR) である Proteus を開発した際に、TI との約 10 年にわたる協力に基づく技術的な専門知識を活用しました。組み込みプロセッサ、電源、接続機能に関する TI の各ソリューションは、フルフィルメント (注文履行) プロセスの最適化と、労働者の保護強化を目標にし、セーフティー バブルや Proteus 内での他の安全性実現テクノロジーの製作に貢献しました。
「ロボット分野での Amazon の卓越性と、組み込みプロセッシングやアナログ分野での TI の卓越性を土台として両社は協力関係を築き上げました」と、TI のマーケティング担当シニア バイス プレジデントを務める Keith Ogboenyiya は語ります。
課題
Amazon Robotics が必要としていたのは、同じ施設の労働者の近くで安全に動作し、Amazon の業務規模に応じて大規模運用可能なロボットでした。この目標を達成するには、エッジでの高効率のビジョン処理、リアルタイム制御、機能安全メカニズムを組み合わせる必要があります。これらのテクノロジーはいずれも、ロボットが周囲の世界を解釈し、迅速かつ安全な方法で反応するのに役立ちます。
ソリューション
Amazon Robotics の設計者は、TI の組み込みプロセッサと、それに関連するパワー マネージメント マルチチャネル IC (PMIC)、さらにイーサネット、CAN (コントローラ エリア ネットワーク)、RS-485 の各プロトコルなどの通信ソリューションを使用し、物体の検出と分類、セーフティー バブルの維持、移動への適応、動作効率に関連する、安全性と効率の分野の重要な課題を解決することができました。
結果
Amazon 初の自律型移動ロボットである Proteus は、特定の制限区域限定ではなく、Amazon の施設内全体を移動できるようになりました。安全な動作を実現する TI の各種テクノロジーを導入した Proteus は、安全かつ効果的に自動化機能をフルフィルメント (注文履行) センターに統合し、Amazon 内で運用する可能性の扉を開きます。
TI のテクノロジー採用で Amazon Robotics の機能安全対応が向上
Amazon Robotics は、E コマース事業に 75 万台以上の移動ロボットを既に導入した、世界最大の産業用ロボット メーカーです。現在、フルフィルメント (注文履行) センター、工場、倉庫でロボットの採用と自律運用が進んでいます。それらのロボットと、ロボットのすぐ近くで働く労働者の間で、制御された安全な方法で相互作用と協力関係を実現することが非常に重要です。
「Proteus は人の近くで運用できる移動ロボットです。以前は不可能だった場所までロボットの運用範囲を広げることができます。その結果、人間との緊密な連携が必要な場所にロボットを持ち込むことができます」と、Amazon の開発とロボット担当の VPである Parris Wellman 氏は語ります。
Amazon と TI は約 10 年にわたって関係を築き上げており、フルフィルメント (注文履行) センターでロボットの採用を増やせるように協力しています。両社が最初に共同作業を開始したのは、開発と導入を広く進め、セーフティー インテグリティ レベル (SIL) 2 の安全認証を取得した最初の移動ロボットである Amazon Robotics の Hercules でした。現在、Amazon Robotics と TI はそれまでの成功を土台として、Amazon 初の自律型移動ロボット (AMR) である Proteus に、人間と同じ空間でシームレスに動作するためのテクノロジーを搭載してきました。Proteus は、SIL 2 安全認証も取得しました。
TI TDA4VM と DRA821 の各組込みプロセッサは、セーフティー バブルという機能の実現に役立ちます。ロボットが人間の周囲を移動するには、これらの機能が不可欠です。セーフティー バブルは、ロボットと人間の間に保護用の境界を形成します。その結果、人間がロボットの近辺に近付いてきた場合、ロボットは自らのルートを再設定し、経路を変更することができます。TDA4VM を RM46L852 マイコンと組み合わせて使用すると、ロボットの応答性と適応性が向上します。
バブルの維持に加えて、TDA4VM と DRA821 の各プロセッサはどちらも、SIL 3 までの機能安全規格をサポートするためのハードウェア診断機能を内蔵しています。これらのデバイス内には密結合型の複数のメカニズムがあり、システム障害が発生した場合でも、さまざまな環境で人間の近くで動作する状況で安全性の強化に貢献します。これらのメカニズムは、システムの健全性を診断し、Proteus が異常を検出したときに修正動作やシャットダウンをトリガするほか、効率と導入時の設定を最適化するのに役立ちます。
「TI のプロセッサは、安全性機能がリアルタイム機能と協調して動作するハードウェア インフラを搭載しています。TI のプラットフォーム上で、Amazon が自社ソフトウェアを開発することができます」と、Ogboenyiya は語ります。
TI の組み込みプロセッサ ソリューションを使用して、Proteus は Amazon の施設内を自律的に移動できます。さらに、パワー マネージメント ソリューションが実現する高い電力効率と高い電力密度は、バッテリ動作時間の延長とシステムの安全性向上に貢献します。接続機能ソリューションは、ロボットがイーサネットや CAN などの多様なプロトコルで通信を実施するのに役立ちます。Proteus は、梱包用の台車を持ち上げて運ぶなど、フルフィルメント (注文履行) センターで実用的な支援を行いますが、工場や倉庫の環境では、より多くの作業を実行できる可能性があります。Amazon Robotics は、Proteus のような AMR を、従業員の近くで安全、協力的かつ効果的に動作するように設計しました。そのため、以前は人間のみに限定されていた制限の多い領域に、今は AMR もアクセスできるようになりました。
「これは素晴らしい協力関係であり、TI とともにロボットを継続的にリリースすることを楽しみにしています」と、Wellman 氏は語ります。
Amazon Robotics について
Amazon のフルフィルメント テクノロジーとロボット (Fulfillment Technologies & Robotics) チームは、人間とインテリジェント マシンの間で動的な協力関係を築き上げています。この複雑な共同作業は、Amazon が比類のない精度で注文を履行するのに役立ちます。Amazon はロボットとの共同作業を導入して以来、世界中で 100 万人以上の新しい職位を増やしてきました。Amazon のロボット テクノロジーと調和して働くと、従業員は業界最先端のテクノロジーとともに活動し、技術的能力を拡大する機会を得ることができます。これらに該当するのは、自律型移動ロボット、高度な制御ソフトウェア、言語認識と機械学習と物体認識とコマンドの意味理解などのテクノロジーです。これらのテクノロジーは、従業員が顧客と従業員両方の快適さを改善し、Amazon 施設の安全性をいっそう向上させるのに役立ちます。
TI のロボット テクノロジーの詳細
Arm® ベースの各種アプリケーション プロセッサで構成された TI の幅広い製品ラインアップを活用すると、車載、産業用、IoT (モノのインターネット) デバイスに適した、多様で効率的なエッジ コンピューティング性能を実現できます。TI が採用している SoC (システム オン チップ) アーキテクチャは、消費電力、サイズ、重量、コストなどの重要なシステム リソースを犠牲にせずに、高性能を実現します。ハードウェア、オープン ソース ソフトウェア、ツールで構成された TI の開発プラットフォームを活用すると、開発中の製品を短期間で市場に投入できます。
TI は、汎用とプロトコル固有それぞれのインターフェイス デバイスで構成された幅広い製品ラインアップを提供しています。TI は、幅広いインターフェイス プロトコルをサポートし、規格に準拠した統合型の機能を業界最小クラスのパッケージ サイズに封止したデバイスを提供しています。これらのデバイスを採用すると、システムの性能と信頼性を向上させることができます。