ENERGYTRACE
MSP マイコン向け EnergyTrace™ テクノロジー
ENERGYTRACE
概要
EnergyTrace™ ソフトウェアは、MSP430™ マイコン (MCU)、MSP432™ マイコン、CC13xx ワイヤレス・マイコン、CC26xx ワイヤレス・マイコンに対応した、エネルギー・ベースのコード分析ツールであり、アプリケーションのエネルギー・プロファイルを測定して表示します。また、超低消費電力化を目的としたコードの最適化に役立ちます。
デベロッパーの皆様がご存じのように、システムの状態を理解していない場合、システムのチューニングは困難になります。 EnergyTrace ソフトウェアを使用すると、最小消費電力の設計を実現するのに必要な情報を入手できます。このフィードバックにより、MSP アーキテクチャが提供している各種技術の実装や、ULP Advisor など、TI が提供する数多くのツールの活用が容易になります。
EnergyTrace™ 技術はマイコンの消費電流を測定するための新手法を実装しています。従来は対象の信号の増幅と、離散時間でのシャント抵抗両端間の消費電流と電圧降下の測定により、電力を測定してきました。一方、EnergyTrace ソフトウェアをサポートするデバッガを使用すると、ソフトウェア制御の DC/DC コンバータがターゲットの電力を生成します。DC/DC コンバータの充電パルスの時間密度は、ターゲット・マイコンの消費エネルギーに等しい大きさです。デバッグ・ツールの内蔵キャリブレーション回路は、単一の充電パルスに等しいエネルギーを定義します。 各充電パルスの幅は一定の値にとどまるので、デバッガは各充電パルスの数を数えて、一定の時間枠のうちに観測したパルスの数を合計するだけで、平均電流を求めることができます。この方法で、非常に精度の高い測定を実現できます。このアプローチを使用すれば、デバイスのエネルギー消費時間が最短の場合でも、記録される総エネルギー消費の低減に寄与します。
このソフトウェアの別の指標を、以下のいずれかで呼んでいます。
- EnergyTrace+ テクノロジーを、EnergyTrace+[CPU States] と呼ぶこともあります。
- EnergyTrace++ テクノロジーを、EnergyTrace+[CPU States]+[Peripheral States] と呼ぶこともあります。
これらのモードは EnergyTrace を 1 段上のレベルに引き上げます。EnergyTrace+ または EnergyTrace++ をサポートしているデバイスをデバッグする場合、マイコンの内部状態に関する情報と、システムのエネルギー消費に関するデータが提示されます。
- CPU の状態として、デバイスがアクティブ・モードになっているのか、または多くの低消費電力モード (LPM) のいずれかになっているのかを確認できます。
- ペリフェラルの状態として、ペリフェラルの ON / OFF ステータスや、(クロック・ソースに関わりなく) すべてのシステム・クロックを表示できます。
このツールを使用すると、アプリケーションが期待どおりに動作しているかどうかを直接確認できます。たとえば、特定のアクティビティまたはシステム・イベントが発生した後、ペリフェラルがオフになっていることを確認できます。
ソフトウェアとハードウェアの要件:
EnergyTrace ソフトウェアを搭載しているのは、Code Composer Studio (CCS) バージョン 6.0 以降と、IAR Embedded Workbench の最新バージョンです。この機能を使用するには、特化型のデバッガ回路が必要です。この回路をサポートしているのは、MSP-FET または XDS110 エミュレータと、多くの MSP LaunchPad™ 開発キットが搭載しているエミュレータです。
EnergyTrace+ と EnergyTrace++ の各テクノロジーを使用するには、シリコン内の付加的な回路が必要です。したがって、これらのモードをサポートしているのは、選択された特定の各種デバイスのみです。MSP432P4x ファミリは、以下の EnergyTrace+ 機能を搭載しています。MSP430FR5x、MSP430FR6x、CC13x2、CC26x2 の各マイコンは、スーパーセットである EnergyTrace++ 回路を搭載しています。
次の表で、さまざまな EnergyTrace™ ソフトウェアがサポートしている機能を要約します。
機能とデバイス | EnergyTrace™ ソフトウェア | EnergyTrace+ ソフトウェア | EnergyTrace++ ソフトウェア |
---|---|---|---|
電流監視 | x | x | x |
CPU の状態 (PC) | x | x | |
ペリフェラルまたはシステムの状態 | x | ||
サポート対象のデバイス | すべてのマイコン (MCU) | すべての MSP432P マイコン (MCU) | MSP430FR59xx/69xx CC13x2/CC26x2 |
互換性のある開発ツール | MSP-FET TMDSEMU110-U (XDS110 スタンドアロン) TMDSEMU110-HDR (XDS110 アドオン) eZ-FET と EnergyTrace の組み合わせ MSP-EXP430FR2311 MSP-EXP430FR2433 MSP-EXP430FR4133 MSP-EXP430FR5969 MSP-EXP430FR5994 MSP-EXP430FR6989
組込み XDS110 MSP-EXP432P401RMSP-EXP432P4111 LAUNCHXL-CC1312R1 LAUNCHXL-CC1352R1 LAUNCHXL-CC1352P1 LAUNCHXL-CC1352P-2 LAUNCHXL-CC1352P-4 LAUNCHXL-CC26XR1 LP-CC2652RB | MSP-FET + アダプタ (MSP-FET-432ADPTR) TMDSEMU110-U (XDS110 スタンドアロン) 組込み XDS110 | eZ-FET と EnergyTrace++ の組み合わせ MSP-EXP430FR5969MSP-EXP430FR5994 MSP-EXP430FR6989 組込み XDS110 LAUNCHXL-CC1312R1LAUNCHXL-CC1352R1 LAUNCHXL-CC1352P1 LAUNCHXL-CC1352P-2 LAUNCHXL-CC1352P-4 LAUNCHXL-CC26XR1 LP-CC2652RB |
EnergyTrace ソフトウェアに関するユーザー・ガイドについては、『User’s Guide for Code Composer Studio™ IDE for MSP430™ MCUs』 (英語) または『User’s Guide for Code Composer Studio™ IDE for SimpleLink™ MSP432 Microcontrollers』 (英語) のどちらかで、 EnergyTrace ソフトウェアに関する複数の章をご覧ください。あるいは、『IAR Embedded Workbench™ IDE for MSP430™ MCUs』 (英語)、または『IAR Embedded Workbench for Arm for SimpleLink™ MSP432 Microcontrollers』 (英語) をご覧ください。
機能
- 電流測定機能は、MSP430 マイコン、MSP432 マイコン、および各種コネクティビティ・デバイスで有効になっています
- CPU 状態のトレース機能は、選択された MSP430 マイコン、MSP432 マイコン、CC13x2 ワイヤレス・マイコン、CC26x2 ワイヤレス・マイコンで利用できます
- ペリフェラル状態のトレース機能も、選択された MSP430 マイコン、CC13x2 ワイヤレス・マイコン、CC26x2 ワイヤレス・マイコンで利用できます
- MSP430 マイコンで EnergyTrace 機能をサポートするには、eZ-FET または MSP-FET のデバッガが必要です
- MSP432 マイコンでこの機能を使用するには、(MSP432 LaunchPad が搭載している) XDS110-ET、または MSP-FET と MSP432 マイコン対応アダプタの組み合わせが必要です
- CC13x2 と CC26x2 の各デバイスでこの機能を使用するには、(LaunchPad 開発キットが搭載している) XDS110-HDR、またはスタンドアロンの XDS110 (TMDSEMU110-U) + EnergyTrace HDR アクセサリ (TMDSEMU110-ETH) の組み合わせが必要です
- Code Composer Studio IDE と IAR Embedded Workbench (EW430 および EWARM) にそれぞれ統合済みです