JAJA695 April 2022 TCAN1462-Q1 , TCAN1463-Q1
第 1 世代の CAN プロトコルの ISO 11898-2 (Classical CAN とも呼ばれる) は 1993 年頃にリリースされました。このプロトコルで許可されるペイロード・データ転送は 8 バイトのみで、最大指定データ・レートは 1Mbps です。CAN バスを使用して相互に通信する多数の電子ノードが車両に搭載される車載用アプリケーションでこの仕様の限界はすぐに現れました。
CAN-FD プロトコルの仕様は 2015 年ごろにリリースされ、ペイロードの長さは 64 バイトに増し、データ・フェーズの最大信号速度も 5Mbps に増加しました。ただし、Classical CAN との下位互換性を確保するため、アービトレーション・フェーズの信号レートは引き続き 1Mbps に制限されていました。
CAN-FD はより高速なデータ・レートとペイロードの増加という利点をもたらしましたが、車両の CAN バス・ネットワークに追加される ECU の数は増加の一途をたどり、十分には対応できませんでした。設計者は、複雑なスター・ネットワークによって生じるバス・リンギングが正しい信号通信に影響し、CAN FD トランシーバの潜在能力を活用できないことに気付きました。図 2-1 は、スター・トポロジの例です。
複数のスタブを使用する複雑なスター・トポロジでは、バス上で伝送される信号のインピーダンス・ミスマッチが発生し、反射を引き起こします。これらの反射により CAN バスが歪み、発振が引き起こされます。このため、サンプリング・ポイントでの CAN バス・レベルと RXD の誤りが発生します。このようなネットワーク効果は CAN-FD ネットワークに固有のものではありませんが、低速動作する Classical CAN はビット持続時間がこれより長いため、図 2-2 に示すようにバスのリンギングが減少し、正しいビットのサンプリングが可能になり、正しい通信が行われていました。
5Mbps の CAN-FD 動作では、複雑なスター・トポロジでリンギングがなくなるまでの時間に対して 200ns のビット持続時間が短すぎるため、信頼性の高いデータ通信が損なわれます。このことから、システム設計者は 5Mbps で CAN-FD を使用できませんでした。
最新の車両におけるネットワーク・データ交換の増加とスループットの高速化の要求から、より高速でネットワークのフレキシビリティと拡張性を高める次世代の車内通信バス・テクノロジーに向けて CAN SIC が推進されています。