JAJA695 April   2022 TCAN1462-Q1 , TCAN1463-Q1

 

  1.   商標
  2. 1SIC とは
  3. 2Classical CAN と標準 CAN-FD の制限
  4. 3CAN SIC によりバス・リンギングが低減される理由
  5. 4テキサス・インスツルメンツの TCAN1462 デバイスの実験結果
  6. 5テキサス・インスツルメンツの CAN SIC デバイス
  7. 6CAN SIC の利点

CAN SIC によりバス・リンギングが低減される理由

CAN バスの通常動作時には、図 3-1 に示すように、リセッシブとドミナントの 2 つの論理状態があります。

図 3-1 CAN バス電圧レベル

ドミナント・バス状態は、バスを差動で駆動する場合で、TXD ピンと RXD ピンは論理 LOW になります。リセッシブ・バス状態は、バスがレシーバの高抵抗の内部入力抵抗 (RIN) を介して VCC/2 にバイアスされる場合で、TXD ピンと RXD ピンは論理 HIGH になります。アービトレーションの期間は、ドミナント状態がリセッシブ状態を上書きします。CAN バス上のリセッシブからドミナントへの信号のエッジは、トランスミッタによって強力に駆動されるため、通常はクリーンです。ドミナント・フェーズの CAN トランシーバの差動トランスミッタ出力インピーダンスは約 50Ω であり、ネットワーク特性インピーダンスと密接に一致しています。通常の CAN-FD トランシーバの場合、ドミナントからリセッシブへのエッジの時に、ドライバの差動出力インピーダンスが突然約 60kΩ になることで反射された信号によるインピーダンスのミスマッチを引き起こし、リンギングが発生します。

トランスミッタ・ベースの SIC は、TXD のドミナントからリセッシブへのエッジを検出し、ドライバ出力のリンギング抑制回路をアクティブにします。CAN ドライバは、tSIC_TX_base までバスのリセッシブを強力に駆動し続けるため、反射が減少し、リセッシブ・ビットがサンプリング・ポイントでクリーンになります。このアクティブなリセッシブ・フェーズでは、トランスミッタの出力インピーダンスが低くなります (約 100Ω)。反射された信号は大きなインピーダンスのミスマッチを発生させないため、リンギングは大幅に低減します。このフェーズが終了し、デバイスがパッシブなリセッシブ・フェーズになると、ドライバの出力インピーダンスが約 60kΩ に上昇します。この現象を 図 3-2 に示します。

図 3-2 CAN SIC テクノロジー:イベントのシーケンス

アクティブなリセッシブ・フェーズにおける重要な要素は、バスを強力に駆動する時間を 530ns 以下にすることです (表 1-1 で示す tSIC_TX_base)。CAN-FD プロトコルのデータ・フェーズは最大 200ns の間のみ持続する (5Mbps での動作時) ため、このリンギング抑制がリセッシブ・ビット持続時間全体にわたってアクティブになり、CAN バスと RXD 信号が訂正されます。ただし、アービトレーション・フェーズでは、1Mbps 動作のときの最も速いビット持続時間が 1µs になり、複数のトランスミッタが同時に送信可能であって、ドミナント・ビットがリセッシブ・ビットを上書きする必要があります。そのため、リンギング抑制の期間がネットワーク全体の長さとアービトレーション速度を制限する場合があります。詳細については、CiA 601-4 の仕様を参照してください。