JAJA712A February   2020  – November 2022 TPS61022 , TPS61023

 

  1.   TPS61022 および TPS61023 で使用される調整可能な低電圧誤動作防止回路
  2.   商標
  3. 1概要
  4. 2提案する回路の原理
  5. 3ベンチ・テスト
  6. 4関連資料
  7. 5改訂履歴

提案する回路の原理

提案するソリューションは、表 2-1 に示す EN のロジック・スレッショルド電圧の特別な性質を利用します 。

  • VIN > 1.8V または VOUT > 2.2V のとき、EN ロジック High のスレッショルド VEN_H は 1.2V です。
  • デバイスが動作を開始した後、EN ロジック Low の標準スレッショルド VEN_L は標準値 0.42V、最小値 0.35V、最大値 0.42V です。
表 2-1 TPS61022 の EN ピンの仕様
パラメータ テスト条件 最小値 標準値 最大値 単位
VEN_H EN のロジック High のスレッショルド VIN > 1.8V または VOUT > 2.2V 1.2 V
VEN_L EN のロジック Low のスレッショルド VIN > 1.8V または VOUT > 2.2V 0.35 0.42 0.45 V

提案するソリューションの概略回路図を、図 2-1 に示します。動作原理の詳細を以下に示します。

  • 最初は、VIN < 1.7V で、VOUT = 0V です。デバイスはシャットダウンし、VIN と VOUT が切断されます。NMOS Q1 がオフになり、EN ピン VEN の電圧は VIN と同じになります。
  • VIN が標準値の 1.7V (最大値 1.8V) より高くなり、EN の電圧がロジック High のスレッショルドより高くなると、デバイスは動作を開始します。EN のロジック High のスレッショルドは標準値 0.95V で、最大値は 1.2V です。VEN = VIN > 1.7V なので、デバイスはソフト・スタート・プロセスを開始します。ソフト・スタート・プロセスのとき、デバイスは最初に VOUT を VIN に近づけた状態でプリチャージしてから、出力をより高い電圧に昇圧するように切り替えます。
  • VOUT が 2.2V より高くなると、VIN ピンの UVLO 値が標準値の 0.4V に変更され、EN のロジック Low スレッショルドが 0.42V に変更されます。R5、R6、C2 があるので、Q1 のゲート電圧はまだターンオンには低すぎるため、VEN はまだ VIN と同じ値です。
  • VOUT が設定値まで上昇し、Q1 がオンになると、EN ピンの電圧はEquation1 で定義されるようになります。
    Equation1. GUID-C4755796-9AEB-4E87-B61B-5A3711EF5640-low.gif
  • VIN が低下し、VEN が標準値の 0.42V よりも低くなると、デバイスはシャットダウンします。VOUT は負荷によって放電されます。Q1 がオフになった後で、VEN は再度 VIN と同じ値に戻ります。ただし、VIN < 1.7V の場合、デバイスはオフのままです。
GUID-A9F8B66C-12C4-4AA0-A5EB-4EE8D2FDAA7E-low.gif図 2-1 提案する回路の回路図

前述の分析に基づき、この方法で設定される UVLO 値は 1.7V より低い必要があります。

R5、R6、C2 の機能は、VOUT の準備が整うまで Q1 をオフのままにすることです。ただし、設定電圧で出力電圧が安定した後は、Q1 をオンにする必要があります。安定状態でのゲートからソースへの電圧は、Equation2 で定義されます。この値は、設計マージンを確保するため、MOSFET のゲートからソースへのスレッショルド電圧より 10% 高くする必要があります。

Equation2. GUID-465CF595-0AC4-4F56-9750-606653F18704-low.gif

ここで

  • VGS(th) は、MOSFET のゲートからソースへのスレッショルド電圧です
  • VOUT は出力電圧の設定値です

R5、R6、C2 の時定数は Equation3 によって定義されますが、デバイスのスタートアップ時間 - 700μs (標準値) とすることを推奨します。

Equation3. GUID-F35682AF-1519-48BB-BFBE-AA951CD3734E-low.gif

外部制御ロジック・ピンを使用して昇圧コンバータをシャットダウンする方法を、図 2-2 に示します。CTRL が High のときデバイスはシャットダウンし、CTRL が Low のときは、提案する回路によってデバイスが制御されます。CTRL 信号がオープン・ドレイン出力をサポートできる場合は、EN ピンに直接接続できます。この場合、CTRL が Low ロジックのとき昇圧がオフになり、CTRL がオープン・ドレインのときは提案する回路によって制御されます。

GUID-FAF3C51B-27DD-477D-A079-51A9CA706160-low.gif図 2-2 提案する回路を I/O でシャットダウンする方法

出力電圧が 5V に設定され、新しい UVLO 電圧が 1.2V と想定すると、提案する回路のコンポーネントの詳細な設計は次に示すようになります。

  • R3 を 1MΩ に設定すると、Equation1 から R4 は 538kΩ になります。表 2-1 のスレッショルドの変動を考慮すると、新しい UVLO の値は最小値 1V、最大値 1.29V になります。
  • Q1 として CSD13381F4 を選択します。このデバイスは、ゲートからソースへのスレッショルド電圧 VGS(th) の標準値が 0.85V、室温での最小値が 0.65V、最大値が 1.1V です。VGS(th) の過熱による変動を考慮して、MOSFET を安全にオンにするには、ゲートからソースへの電圧を 1.2V より高くする必要があります。Equation2 に従って、R5 は 1MΩ、R6 は 359kΩ を選択します。
  • R5、R6、C2 の時定数として 700μs (TPS61022 の起動時間) を選択すると、Equation3 から C2 は 2.6nF になります。

外付け部品の値を、図 2-3 に示します。

GUID-B8F44BFF-6699-4385-88E4-420F07956BC6-low.gif図 2-3 提案する回路の部品の値