JAJA731A march   2022  – may 2023 TMAG5170 , TMAG5170-Q1 , TMAG5170D-Q1 , TMAG5173-Q1 , TMAG5273

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   商標
  4. 1はじめに
  5. 2磁石の選択
    1. 2.1 配置に関する考慮事項
    2. 2.2 磁石の特性
  6. 3測定の非線形性
  7. 4機械的誤差の発生源
  8. 5シグナル・チェーン誤差
  9. 6キャリブレーション手法
  10. 7改訂履歴

磁石の特性

軸上での測定に径方向磁化の円柱型磁石を使用するか、軸外または面内での測定にリング磁石を使用するかを選択する以外に、その他のさまざまな磁石の特性が測定対象の磁界に影響を及ぼします。

材料グレード

磁石の材料グレードは、その磁石の B-H 関係に直接影響を及ぼします。外部から印加した H 磁界と、その結果磁石に発生する磁束密度 B との関係を理解しておくと便利です。

GUID-20220316-SS0I-NTFZ-QMZT-ZHGD0QZZ22LP-low.svg図 2-3 B-H 曲線の例

永久磁石を磁化するために使用される磁界 H の印加を取り除いたときに残留する磁束密度 B の値は、「残留磁気」 (Br) と呼ばれます。この値は閉磁気回路で測定され、磁石の表面磁界とは異なります。表面磁界は磁力計を使用して開磁気回路で測定され、磁石の形状によって異なります。Br は同じグレードであれば磁石のサイズにかかわらず一定ですが、磁石によって生成される表面磁界は、その磁石の表面積と極長の関係に依存します。

どの磁性材料でもグレードによって Br 値は異なり、それによってその磁石の磁界強度が決定されます。図 2-5 に、さまざまなグレードと材料の同じ寸法の磁石における磁束密度 B と距離との関係を示します。磁石の分極軸上にセンサを配置すると、回転中に測定されるピーク磁束密度 B の値を求めるために範囲を調整できます。この場合、およびこれ以降のすべてのグラフでは、直径 6mm、3mm 厚の磁石が使用されています。

GUID-20220316-SS0I-HV1L-0815-GKZXWQJBDRNT-low.svg図 2-4 磁石とセンサのエアギャップ範囲
GUID-20220316-SS0I-GTLM-QPV0-WWFZZVX85SPW-low.svg図 2-5 さまざまな磁性材料におけるピーク磁界とエアギャップ距離との関係

サイズ

材料グレード」で説明したように、磁石のサイズは表面の磁束密度に影響し、それが測定される磁石の磁界にも影響を及ぼします。図 2-6 に、高さと半径が等しいさまざまな N52 グレードのネオジム磁石における磁束密度 B と距離との関係を示します。

GUID-20220316-SS0I-ZQDL-2TBG-MR0MCW2XKJH8-low.svg図 2-6 磁石の異なる半径におけるピーク磁界強度とエアギャップ距離との関係

各磁石の表面磁界は同じであり、任意のエアギャップ距離において、磁石の半径が長いほど測定される磁界は大きくなります。また、任意の距離で測定される磁界と磁石の半径との比は、一定に保たれることにも注意してください。つまり、半径 1.5mm の磁石を使用して 2mm で観測される磁界は、半径 6mm の磁石を使用した 8mm での磁界と同じです。

温度ドリフト

使用可能なさまざまな磁性材料はすべて、温度の変動に対して異なる応答を示します。すべての磁石で、キュリー温度までは磁界強度はある程度低下します。キュリー温度は、磁石内の原子双極子が磁気整列を維持できなくなる温度です。表 2-1 に、各種磁性材料の代表的な値を示します。

表 2-1 磁性材料の温度応答
材料 温度ドリフト (C)
NdFeB -0.12%/C
SmCo -0.04%/C
AlNiCo -0.02%/C
フェライト -0.2%/C
動作温度範囲が広いシステムでは、サマリウム・コバルト (SmCo) タイプの磁石が温度ドリフトが低いことからよく選択されますが、磁界はネオジム磁石で一般的に測定される磁界ほど強くありません。

ほとんどのアプリケーションでは、センサで測定可能な入力を生成可能な最小の磁石を使用することが目標となります。どのようなシステムでも、磁石の選定では、磁石を回転軸に取り付けられるかどうか、コストおよび入手しやすさが主要な要因になります。一般的には、ネオジム磁石 (NdFeB) を使用すると磁界が最強になり、フェライト磁石を使用するとコストが最低になります。