JAJT295 October 2019 OPA365 , TLV365 , TMS320F280039C , UCC24612 , UCC24624
このシリーズのパート 1 では、共振コンバータの設計に影響を及ぼす主な寄生パラメータと、部品の選定基準およびトランスの設計に焦点を置きました。この記事では、共振コンバータの同期整流器 (SR) の設計に関する検討事項を説明します。
共振コンバータの動作状態は、パルス幅変調コンバータよりもかなり複雑になる可能性があります。図 1 のインダクタ - インダクタ - コンデンサ直列共振コンバータ (LLC-SRC) を例にとると、通常の LLC-SRC 設計には、負荷条件およびスイッチング周波数 (fsw) と直列共振周波数 (fr) の相対関係によって、4 つの共通状態 (図 2) があります。fsw r のとき、整流ダイオードの電流はゼロになり、アクティブ スイッチ (Q1 または Q2) がオフになります。そのため、整流器 (SR) として MOSFET (金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ) を使用する場合、整流器への逆電流を防止するため、デューティ サイクルを 50% 未満にして SR をオフにする必要があります。そうしないと、過剰な循環電流によってコンバータの効率が低下します。
整流器の電流導通時間は、重負荷および fsw r の場合は 0.5/fr です。そのため、重負荷および fsw r の場合に SR の導通時間を 0.5/fr よりわずかに短くし、軽負荷の場合には SR をディスエーブルにすることが可能です [1]。ただし、この開ループの SR 制御方法では、コンバータの効率を最適化できません。
より信頼性の高い SR 制御方法として、MOSFET のドレイン - ソース間電圧 (VDS) センシングを使用する方法があり ます [2] (図 3)。この SR 制御方法では、MOSFET の VDS を 2 つの異なる電圧スレッショルドと比較して MOSFET のオン / オフを切り替えます。テキサス・インスツルメンツの UCC24624 など、新しい VDS センシング SR コントローラの中には、最小の遅延で高速な SR ターンオフを実現するため、比例ゲート ドライバをアクティブにする第 3 の電圧スレッショルドを持つものもあります。
電圧スレッショルドは mV レベルであるため、高精度のセンシング回路が必要です。VDS センシング方法は一般的に、VDS レベル (通常 200V 未満) と fsw 制限 (通常 400kHz 未満) を持つ IC を使用することで実現できます 。VDS センシングによる SR 制御方法には制限があるため、別の SR 制御方式を使用して、高電圧および高周波共振コンバータの SR 導通を最適化する必要があります。
高周波共振コンバータ SR を制御する別の方法として、ロゴスキー コイル [3] と、その後に積分器とコンパレータを使用する方法があります。図 4 に、コンデンサ - インダクタ - インダクタ - インダクタ - コンデンサ直列共振デュアル アクティブ ブリッジ コンバータ (CLLLC-SRes-DAB) 上にロゴスキー コイルを配置した SR 制御のブロック図を示します [4]。電流センシング用に、巻線付き空芯コイル (ロゴスキー コイル) をトランス巻線に配置します。時変電流がコイルを流れると、電流で生成された磁束によってコイル巻線に電圧が誘導されます。誘導電圧と元の時変電流には、90 度の位相差があります。
ロゴスキー コイルの後に積分器を追加すると、元の時変電流と同位相の電圧、またはそれに先行する電圧を生成できます。つまり、可能な伝搬および制御遅延に対応するため、積分器出力のゼロ電圧交差が時変電流のゼロ電流交差よりも少し早く発生するよう設定することもできるということです。その後、増幅された積分器の出力信号を指定されたコンパレータのスレッショルドと比較して、SR 導通時間がほぼ最適化された SR 駆動信号を生成します。制御回路にスロープ検出ロジックを追加すると、さまざまな負荷条件にわたって SR の導通時間をさらに最適化できます。ロゴスキー コイルは磁束によって電流を検出するため、電圧レベルの制限はありません。また、ロゴスキー コイルは磁気コア材料の代わりに空芯を使用するため、帯域幅が非常に広くなり、飽和制限はありません。そのため、VDS センシングによる SR 制御方法とは異なり、MHz レベルの共振コンバータでも、周波数制限の懸念はありません 。
図 5 に、ここで提案する方法を示します。図 5 の時変電流を i(t) と定義し、ロゴスキー コイルがトランス巻線上に垂直に配置されていると想定すると、ロゴスキー コイル巻線の出力電圧は式 1 を使用して計算できます。
ここで A はロゴスキー コイルの 1 巻の断面積 (ロゴスキー コイルのすべての 1 巻の断面積が同じであると想定)、N はロゴスキー コイルの巻数、l はロゴスキー コイルのリングの円周、μ0 = 4π ∙ 10-7H/m は透磁率定数です。
提案するセンシング回路で理想的なオペアンプを使用していると想定した場合、ロゴスキー コイルの出力 V1_0 とパッシブ積分器の出力 V2_0 の電圧関係は式 2 で表されます。
ここで、a0 は式 4 で表される定数です。
パッシブ積分器とアンプを使用して位相差を調整する方法を理解しやすくするため、時変電流が純粋な正弦波であるとすると、ロゴスキー コイルの出力電圧と積分器の出力は両方とも正弦波になります。つまり、式 1 と式 2 を使用し、v2_0 (t) = a1 sin (ωt) と想定して i(t) を求めるため、式 2 を式 5 のように書き換えることができます。
ここで、式 6 は次のとおりです。
ロゴスキー コイルのピン配置を反転すると、時変電流は式 7 のようになります。
ロゴスキー コイルの出力と積分器の入力との接続極性を適切に設定し、R1、R2、C1、fsw (ω = 2πfsw) の値を変化させることにより、式 3 で Φ = −π/2 とし、式 4 で Φ = π/2 とすると、積分器の出力 v2_0 (t) を SR の電流 i(t) と同相にできます。さらに、実用的なアプリケーションでは、積分器の波形を SR 電流を先行するように設定できます。そのため、コントローラとドライバにそれぞれ応答時間と伝搬遅延があっても、ゼロ電流交差点で SR をターンオフさせることができます。
図 6 に、センシング回路の巻線電流測定値とゲイン アンプの出力電圧を示します。この図からわかるように、ゼロ電圧交差を実際のセンシング電流よりも早くターンオフするようにプログラムすると、伝搬遅延と制御遅延に対応できます。
図 7 に、スイッチング周波数が直列共振周波数を下回ったときの理想的な SR ターンオフ タイミングを示します。