JAJU824 may 2021 ISOW1412 , ISOW1432
RS-485 は、動作の堅牢性から、産業用システムで一般的に使用されている通信インターフェイスです。これらのシステムは多くの場合、長距離の通信や、大きな電位を持つサブシステム間の通信を行う必要があります。どちらも、システム設計者にとって課題となります。RS-485 バスをシステムの他の部分から絶縁することで、重要な回路を保護できます。場合によっては、高電圧や不要な過渡から人間のオペレータを保護することもできます。高電圧からの保護に加えて、ガルバニック絶縁も RS-485 システムの長距離通信に多く使用され、ノイズやバス上のデータの中断を引き起こす、グランド・ループを防止します。
RS-485 通信でガルバニック絶縁が必要な場合、マイクロコントローラからトランシーバへの送信、受信、イネーブルの信号を絶縁するために、信号の絶縁が必要です。このために通常は、絶縁型 RS-485 トランシーバを使用するか、またはデジタル・アイソレータと外部トランシーバを組み合わせて使用します。RS-485 データの絶縁に加えて、絶縁型トランシーバの 2 次側に絶縁型電源を供給する必要があります。この用途のため、DC/DC コンバータをプッシュプル、フライバック、フライ降圧など、さまざまなトポロジで使用できます。絶縁型電源を作成するために、トランス・ドライバを外部トランスと組み合わせて使用する例を、図 1 に示します。
分離実装の代わりに、図 2 に示すように、DC/DC 内蔵の絶縁型 RS-485 トランシーバを使用することもできます。この場合、図 1 で赤にハイライトされている機能の全体がシングルチップに完全に統合されています。
シングルチップの絶縁型トランシーバは、システム・エンジニアが製品の設計時に直面する、次のような設計上の課題の解決に役立ちます。
基板面積の削減。シングルチップ・ソリューションの主な利点の 1 つは、他の分離実装に比べて基板面積を削減できることです。システム設計者がソリューション・サイズの縮小や、製品の新世代ごとに機能を追加することを求めている場合、絶縁型 RS-485 用のシングルチップ・ソリューションを組み込むことで、図 3 に示すように、基板面積を 48% 節減できます。
x および y 方向の寸法を小さくできるのに加えて、ソリューションの高さも大幅に減らすことができます。標準的なトランスは、シングルチップ・デバイスのパッケージの高さよりも 2~3 倍も厚い可能性があります。
シングルチップの絶縁型 RS-485 デバイスには多くの利点がありますが、統合の強化に伴う性能のトレードオフがこれまで存在していました。パッケージ内に収まるほどトランスを小型にするには、スイッチング周波数を高くする必要があります。スイッチングが高くなると、電力損失が増加し、効率が低下します。さらに、トランスが物理的に小さくなると、バリアの両側にまたがる同相寄生容量が増加し、システム・レベルで放射放出性能が低下します。これらのデバイスの放射放出があることから、CISPR 32 や他の一般的な業界要件を満たすのが困難な場合があります。さらに、これらのデバイスでは、デバイスのパッケージ内の接合部温度が上昇せずにサポート可能な負荷電流が制限される傾向があります。周囲の温度が高いことが予想される環境では、これが別の制限となります。
DC/DC コンバータを内蔵したテキサス・インスツルメンツのシングルチップ絶縁型 RS-485 トランシーバである ISOW1412 と ISOW1432 は、このようなシングルチップのソリューションを使用するのが困難だった理由である、一般的な問題点の多くを克服できるように設計されています。このような課題のうち最大のものは一般に、CISPR 32 や他の放射放出レベルのマスクを満たすことです。ISOW1412 と主要な競合デバイスとの放出の比較を、図 4 に示します。これらの放出は、絶縁バリアの両側にスティッチや Y コンデンサを使用せず、2 層 PCB でテストしたものです。これらのデバイスは、LDO とバッテリにより給電され、入力電源ノイズを最小限に抑えています。PCB には、デバイスの入力と出力にフェライト・ビーズが含まれています。図 4 に示す結果は、入力電圧が 3.3V、出力電圧が 3.3V のとき、ISOW1412 が大きな余裕を持って CISPR32 規格に合格しているのに対して、競合ソリューションは制限ラインに近い、または超えていることを示しています。市場の既存のソリューションを使用すると、CISPR 32 Class B や他の放射放出規格を満たすのは困難な可能性がありますが、ISOW1412 と ISOW1432 は業界をリードする放出性能を持っているため、システム設計者はシステム・レベルで余裕を持ってこの作業に取り組むことができます。
また、集積度が高いシングルチップのソリューションでは、放熱性能も一般的な課題になります。ISOW14xx ファミリは最高 47% の効率を実現し、消費電力の低減と、より高い周囲温度範囲のサポートを可能にします。図 5 に示すように、ISOW1412 は競合製品と比較して約 4℃低温で動作します。これにより、ISOW1412 と ISOW1432 は -40℃~125℃の産業用温度範囲全体で動作できます。これに対して競合ソリューションでは、動作範囲を 85℃または 105℃までに制限する必要があります。
ISOW1412 は 500kbps、ISOW1432 は 12Mbps のトランシーバで、いずれも全二重ですが、半二重にも構成できます。ISOW14xx ファミリのデバイスは、MODE ピンを使用してバス電圧の差動を 1.5V から最小 2.1V に拡大し、PROFIBUS をサポートできます。これによって、より優れた信号対雑音比を実現し、ノイズの多い環境でも信頼性の高い通信を保証できます。さらに、どちらのデバイスも、バス上で最高 8kV の IEC-ESD 保護機能を搭載しているため、バス上の TVS ダイオードを除去して、システムのコストを削減できます。どちらの ISOW14xx デバイスも、診断、LED 表示、電源監視機能に使用するため、追加の 1Mbps GPIO チャネルを搭載しているので、基板に別のデジタル・アイソレータを実装する必要はありません。これらのデバイスは、単一の 3V または 5.5V 電源で動作するか、または最低 1.8V のロジック・レベルを使用し、パワー・コンバータと独立に動作できます。