JAJY138 November   2023

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   概要
  4.   ノイズと ADC
  5.   電源アーキテクチャにおけるノイズと精度の定義
  6.   低ノイズと低消費電力の電圧リファレンスのイノベーション
  7.   超低ノイズ電圧リファレンスのイノベーション
  8.   簡素化した電源アーキテクチャによるノイズ特性と放熱特性の改善
  9.   LDO 電源レールによる大電流、低ノイズ
  10.   高精度バッテリ監視のイノベーション
  11.   まとめ
  12.   その他の資料

簡素化した電源アーキテクチャによるノイズ特性と放熱特性の改善

クロック、データ コンバータ、アンプに電力を供給する従来の構成は、図 9 に示すように、DC/DC コンバータ (またはモジュール) の後段に LDO、さらにその後段にフェライト ビーズ フィルタを配置するものでした。この設計のやり方で、電源から負荷に伝わるノイズとリップルの両方を最小化でき、負荷電流がおおむね 2A 以下の場合は適切に動作します。ただし、負荷が大きくなるほど、LDO で生じる電力損失が原因で、効率と放熱管理に課題が生じます。たとえば、標準的なアナログ フロント エンド アプリケーションでは、ポスト (後段) レギュレーション LDO により電力損失が 1.5W 増加する可能性があります。

GUID-20231009-SS0I-W8SZ-22MD-RRZKC3M0RK6W-low.svg 図 9 DC/DC コンバータ、LDO、フェライト ビーズ フィルタを使用する標準的な低ノイズ アーキテクチャ

標準的な電源アーキテクチャにおける LDO の利点は、高 PSRR により高周波ノイズ領域のスイッチング ノイズを低減しながら、高精度の電圧レールを提供できることです。LDO を使用する場合のトレードオフは、発熱と消費電力の増加です。電力損失を制御しながら低ノイズを確保する効果的な方法は、図 10 に示すように LDO を電源設計から全面的に排除し、低ノイズの DC/DC 降圧コンバータまたは降圧モジュールを使用することです。LDO を使用しないこのデザインは、低ノイズを達成しながら、電力損失を低減し発熱を改善します。

GUID-20231009-SS0I-V03Q-JKGX-J250THBFVVQV-low.svg 図 10 LDO なしで低ノイズ降圧コンバータを採用

TPS62912TPS62913 で構成される低ノイズ降圧コンバータ ファミリや、TPSM82912TPSM82913 の各モジュールは、ノイズ低減 / ソフト スタート ピンを実装しており、ここに 1 個のコンデンサを接続して、図 11 に示すように、内蔵の Rf と、外部接続コンデンサ CNR/SS を組み合わせてローパス RC フィルタを形成します。この実装は本質的に、LDO のバンドギャップ ローパス フィルタの動作を模倣しているため、出力電圧リップルを 10μVRMS 未満に抑えることができます。また、TPS62913 は、2.2MHz のスイッチング周波数とオプションの 2 段目フェライト ビーズ LC フィルタを活用することで、標準的なスイッチング ノイズが存在しない高周波領域でも低ノイズ フロアを実現できます。

GUID-20231008-SS0I-SRN3-BM1C-GM2R90WVSHVW-low.svg 図 11 バンドギャップ ノイズ フィルタリングを実行する低ノイズ降圧コンバータのブロック図

ADC12DJ5200RF は、4W の消費電力で DC から 10GHz の範囲をサンプリングする RF サンプリング ADC です。PSRR は電源のリップルとノイズを減衰させますが、残留リップルとノイズが ADC の出力スペクトルに現れ、誤差の原因となります。ADC12DJ5200RF のアナログ電圧レールの電源要件はより敏感なため、低ノイズが必要です。低ノイズおよび大電力のアナログ レールに TPS62912 を使用すると、DC/DC と LDO の組み合わせに比べて電力損失を最小化しながら、簡素化された効率的な電源アーキテクチャを可能にします。