JAJA715 March   2022 DRV5011 , DRV5012 , DRV5013 , DRV5015 , DRV5021 , DRV5023 , DRV5032 , DRV5033 , TMAG5110 , TMAG5111 , TMAG5123 , TMAG5231 , TMAG5328

 

  1. 1アプリケーション・ブリーフ

アプリケーション・ブリーフ

はじめに

回転式流量計は、液体の流れが、流量に比例する速度で機械アセンブリを回転させることを利用します。ホール・エフェクト・センサを使って実装すれば、リード・スイッチを使用した流量計と比べて、フォーム・ファクタの小型化、デバイス寿命の延長、組み立て誤差の低減を実現できます。

図 1-1 に示すように、磁気インペラとホール・エフェクト・センサによって、堅牢な非接触方式による液体の流量測定を実装できます。このアプローチでは、インペラの回転に伴ってホール・センサが変化する磁界を検出できるように、インペラ上に磁石を配置します。この変化する磁界によって、ホール・デバイスの磁気スレッショルドを超えるときに出力状態が変化します。したがって、ホール・センサの出力周波数を使って、メーターを流れる液体の流量を測定できます。

図 1-1 流量計の動作図

機械式の流量計を設計する場合、システム実装の基本的な要件を評価する必要があります。最小および最大流量などの特性は、インペラ・サイズなどの機械的要因に影響を与えます。磁石の選択は、アプリケーションに最適なホール・エフェクト・センサのタイプに影響を及ぼします。システムの精度要件は、測定を実現するために必要な磁石の数やホール・センサの合計数に影響を及ぼします。

デバイスの感度

流量計で使用する磁石に対して十分な感度が得られるように、ホール・エフェクト・センサを選択します。磁石の位置とサイズは、ホール・エフェクト・センサによって検出される磁束密度に大きな影響を及ぼす可能性があります。ホール・エフェクト・デバイスは、多くの場合、アプリケーション固有の感度要件に適合するように、複数の感度オプションが利用可能です。磁界の変化に対して確実にトリガできる十分な磁気的余裕を備えたホール・エフェクト・センサを選択する必要があります。

ユニポーラ (単極性) スイッチ

ユニポーラ・スイッチは、最も単純なホール・エフェクト・デバイスであり、磁石の N 極または S 極のいずれか一方向について、BOP および BRP をセンシングする機能を備えています。センシング方向が単一方向であるセンサを使用する場合、磁束をセンシングするためには、磁石の向きを適切にする必要があります。ホール・エフェクト・スイッチの一般的な磁石の実装としては、N 極または S 極の磁石の交互配置、または磁石と磁石の間で磁束密度が BRP スレッショルドを下回るように十分な間隔を確保した単方向の磁石、などがあります。デジタル・ホール・エフェクト・デバイスでは、BOP およびBRP がデバイスのスイッチング・スレッショルドを決定します。ホール・エフェクト・スイッチの場合、この特性により、出力デューティ・サイクルは、磁気スレッショルド・レベルと磁石の動きに依存します。一般に、ホール・エフェクト・スイッチを流量計設計に実装する場合は、ラッチよりも注意が必要です。ただし、スイッチは、さまざまな磁石の実装と組み合わせて使用できるため、流量計の機械的設計の柔軟性がさらに向上します。図 1-2 にユニポーラ・スイッチの動作を示します。

図 1-2 ユニポーラ・スイッチの動作

オムニポーラ (両極性) スイッチ

オムニポーラ・スイッチは、相互接続された逆極性の 2 つのユニポーラ・スイッチとして機能します。したがって、スイッチは、やはり BOP および BRP によって動作しますが、磁束の極性はセンサの出力に影響を及ぼしません。この実装では、磁石と磁石の間で 磁束密度が BRP スレッショルドを下回るように、距離を十分離して磁石を配置する必要があります。オムニポーラ・スイッチを使用すると、極性がセンサの動作に影響を及ぼさないので、磁石を任意の向き (センサに対する面が N 極または S 極) に配置できます。磁石はどちらの向きにでも配置できるため、流量計の全体的な機械的アセンブリが簡単になります。オムニポーラ・スイッチの動作を 図 1-3 に示します。

図 1-3 オムニポーラ・スイッチの動作

1D ラッチ

1次元 (1D) ホール・エフェクト・ラッチは、スイッチと同様の動作特性を持っていますが、逆極性の磁極が検出されるまでは、以前の出力状態を保持する点が異なります。したがって、出力を変化させるためには、変化する磁極をセンサが検出する必要があります。磁石の間隔が等しいと仮定すると、ラッチの出力波形は、センシング周波数に関係なく約 50% のデューティ・サイクルになります。図 1-4 に、ホール・エフェクト・ラッチの動作特性を示します。

図 1-4 ラッチ動作

2D 統合ラッチ

2次元 (2D) ラッチは 1D ラッチと同様に動作しますが、パッケージに複数のセンシング素子が内蔵されています。TMAG5111 デバイスの場合、この特長により回転センシングと方向センシングが可能になります。2D ラッチには複数のセンシング素子があるので、追加の磁極を必要とせずに、センシング・システムの分解能を向上させることができます。さらに、2D ホール・エフェクト・ラッチが本来備えている直交特性により、2 つの 1D ホール・エフェクト・ラッチを互いに 90° 離れた位置に配置する必要がなくなります。直交出力により、機械式流量計で、より正確な周波数測定および逆流の検出が可能になります。

帯域幅

ホール・エフェクト・センサの帯域幅はデジタル特性として規定されており、オペアンプなどのデバイスのアナログ帯域幅とは異なります。帯域幅は、ホール・エフェクト・センサで検出できる最大周波数を決定します。インペラの最大回転速度がデバイスの帯域幅よりも小さいかどうかを確認して、流量計に配置する磁極の数を考慮する必要があります。たとえば、帯域幅の広い DRV5013 ホール・エフェクト・ラッチ (30kHz) と32 極 (N 16 極、S 16 極) のリング磁石を使用する流量計の理論上の最大センシング速度は、1 秒あたり 1875 回転です。計算された最大センシング速度を使って、最大流量のときに機械アセンブリがホール・エフェクト・デバイスのセンシング能力を超えないことを確認します。

動作電圧範囲

システムごとに、使用可能な電源電圧が異なります。システムで利用可能な電源電圧が、すべてホール・センサの動作電圧範囲外である場合、電圧レギュレータ・デバイスを追加して、ホール・センサに電力を供給するための電圧レールを生成する必要があります。DRV5013 などのデバイスは、広い電源電圧範囲 (2.5V~38V) を備えているため、このホール・エフェクト・センサは、さまざまな高電圧または低電圧アプリケーションに適しています。

パッケージ

パッケージのサイズと感度方向によってホール・エフェクト・センサの位置が決まるので、パッケージの選択は、流量計の機械的設計に影響を及ぼす可能性があります。表面実装パッケージをリード付き TO-92 パッケージと比較すると、このことがよくわかります。図 1-5 に、SOT-23 および TO-92 パッケージの従来型および同一面内ホール・エフェクト・センサのセンシング方向の違いを示します。機械的制約によってホール・センサの取り付けの選択肢が制限される場合は、代案として、同一面内センサを使用すれば、パッケージの横方向に磁界を検出できます (図 1-5)。

図 1-5 パッケージの感度

消費電力

低消費電力のホール・エフェクト・デバイスは、動作時の消費電流低減により、バッテリ駆動システムの動作寿命を延長します。たとえば、DRV5032 低消費電力ホール・エフェクト・スイッチには、5Hz のサンプル・レート・デバイスがあり、1.8V 電源での消費電流は、わずか 0.54μA (標準値) です。消費電流は、一般にデバイスの帯域幅と反比例するため、目的の流量監視アプリケーションについて、この 2 つの特性のバランスを取る必要があります。広い帯域幅と低消費電力が必要な場合には、スリープ・ピンまたはイネーブル・ピンを外部でデューティ・サイクルするか (デバイスに当該ピンがある場合)、または、デバイスの VCC ピンをデューティ・サイクルすることにより、平均消費電流を低減する必要があります。

ホール・エフェクト・センサの機能の比較概要については、表 1-1 を参照してください。

表 1-1 ホール・エフェクト・センサの概要
ユニポーラ (単極性)
スイッチ
オムニポーラ (両極性) スイッチ1D ラッチ2D ラッチ

磁石の実装

複数極の交互配置、間隔を設けた

単一方向磁石

間隔を設けた磁石 (N 極または S 極)

複数極の交互配置

複数極の交互配置

コスト

平均的

平均的

より低額

より高額

方向検出機能

複数のセンサが必要

不可能

複数のセンサが必要

統合

パッケージ・オプション

X2SON、TO-92、SOT-23

X2SON、TO-92、SOT-23

X2SON、TO-92、SOT-23、DSBGA

SOT-23

出力段

プッシュプル、オープン・ドレイン、電流

プッシュプル、オープン・ドレイン

プッシュプル、オープン・ドレイン

オープン・ドレイン

流量計アプリケーションでホール・エフェクト・センサを使用する方法の詳細とガイドについては、表 1-2 および
表 1-3 を参照してください。

表 1-2 その他の推奨デバイス
デバイス特性設計上の考慮事項
TMAG5231低消費電力、低電圧 (1.65V~5.5V) のホール・エフェクト・スイッチ。SOT-23 パッケージで供給最小電源電圧は 1.65 Vです。20Hz の帯域幅、低消費電力のオムニポーラ・スイッチで、コンパクトなバッテリ駆動の民生用および産業用アプリケーション向けに、システム全体のコストを最適化するよう設計されています。プッシュプル出力段には、外部プルアップ抵抗は必要ありません。
TMAG5123高電圧 (最大 38V)、同一平面内、高精度スイッチ。SOT-23 パッケージで供給広い電源電圧範囲 (2.5V~38V)。広帯域幅ユニポーラ・スイッチ (40kHz)。同一面内スイッチなので、磁界の横方向センシングが可能になり、スペースに制約のあるシステムでセンサと磁石のフレキシビリティを実現できます。
DRV5011低電圧のホール・エフェクト・ラッチ。DSBGA、SOT-23、TO-92、X2SON パッケージで供給されます最小電源電圧 2.5V。高帯域幅の 1D ラッチ (30kHz)。さまざまなパッケージ・オプションにより、小さいフォーム・ファクタの流量計設計で使用できます。プッシュプル出力段には、外部プルアップ抵抗は必要ありません。
TMAG5110高感度、2D ホール・エフェクト・ラッチSOT-23 パッケージで供給広い電源電圧範囲 (2.5V~38V)。広帯域幅 2D ラッチ (40kHz)。2D 統合ラッチなので、1D ラッチに比べて高い感度が得られます。この実装により、逆流検出の双方向センシングが可能になります。
表 1-3 関連技術資料:
名称概要
TI プレシジョン・ラボ - 磁気センサホール・エフェクトとその用途を説明した一連の有益なビデオ・シリーズ
近接磁気センシング向けのツール磁石センサの設計の可能性を判断するために使用できるツール
低消費電力アプリケーションでのホール・エフェクト・センサ低消費電力アプリケーションでホール・エフェクト・センサを設計するためのアプリケーション・レポート
ホール・エフェクト・センサとは?ホール・エフェクトについて、およびそれを磁気センサの製作に使用する方法についての説明
ホール・エフェクト・センサを使った遷移検出類似のホール・エフェクト・スイッチ・アプリケーションに関するアプリケーション・レポート
ホール・アダプタ評価基板ホール・エフェクト IC とのインターフェイスを迅速、簡単、かつ低コストで実現