JAJSRD1B August 2014 – February 2024 THS4541
PRODUCTION DATA
図 6-1 は、図 7-1 の回路で 402Ω 固定の帰還抵抗を使用した場合の、ゲインに対する小信号応答を示しています。電圧フィードバックは FDA に基づいているため、THS4541 はゲイン設定によって変化する応答形状を示しています。この応答形状は、主にクロスオーバー時におけるループ ゲインのクロスオーバー周波数と位相マージンによって決定されます。このループ ゲインのクロスオーバー周波数は、開ループ応答とノイズ ゲインが交差する点 (ループ ゲインが 1 に低下する点) です。ノイズ ゲインは出力から差動入力への分割電圧の逆数であり、各フィードバック パスでの平衡分圧比を使用します。一般に、ノイズ ゲイン (NG) は、ソース インピーダンスから入力マッチングを供給する設計においては、信号ゲインと同じではありません。NG は、1 + Rf / (反転加算接合部からグランドまでの総インピーダンス) によって求めることができます。表 8-1 のゲイン スイープで算出した抵抗値を使用して、NG を示すスイープを繰り返すことにより、表 7-1 を求めることができます。ここでは、厳密な R ソリューション飲みを示しています。
信号ゲイン | Rt、EXACT (Ω) | Rg1、EXACT (Ω) | Rg2、EXACT (Ω) | ノイズ ゲイン |
---|---|---|---|---|
1 | 55.2 | 399 | 425 | 1.94 |
2 | 60.1 | 191 | 218 | 2.85 |
3 | 65.6 | 124 | 153 | 3.63 |
4 | 72 | 89.7 | 119 | 4.37 |
5 | 79.7 | 67.8 | 98.3 | 5.09 |
6 | 89.1 | 54.2 | 86.5 | 5.65 |
7 | 101 | 43.2 | 76.6 | 6.25 |
8 | 117 | 35.2 | 70.1 | 6.74 |
9 | 138 | 29 | 65.8 | 7.11 |
10 | 170 | 23.6 | 62.5 | 7.44 |
11 | 220 | 18.7 | 59.3 | 7.78 |
12 | 313 | 14.6 | 57.7 | 7.97 |
13 | 545 | 10.8 | 56.6 | 8.11 |
14 | 2209 | 7.26 | 56.1 | 8.16 |
NG は、帯域幅およびすべての出力誤差項 (DC オフセットやノイズなど) にとって非常に重要です。低速デバイスの場合、通常は DC ノイズ ゲインのみを考慮します。ただし、THS4541 の場合、300MHz 以上のループ ゲイン クロスオーバーでは、帰還回路により差動加算接合部への寄生極が生成され、ノイズ ゲインは周波数とともに増加します。この極によって、ループ周辺に位相シフトが追加され、想定よりも低いクロスオーバー周波数となります。402Ω の帰還抵抗上にある 0.2pF の寄生が示すように、図 7-5 の帰還回路 (シングルエンド) を考慮します。THS4541 の 0.85pF の差動入力容量は、この片面分析回路の場合、1.7pF の寄生としてシングルエンドに変換されます (ここに示す Rg は 図 7-1 の Rg2)。
図 7-5 における Vout から Vin までの応答形状には、極とゼロがあります。NG については、図 7-5 の Vin と Vout をラプラス変換して、その逆数をとることによって、式 1 のように周波数依存の NG 応答が求められます。この式ではゼロが最初に求まり、次に極が求まります。
ゼロの位置は重要です。図 7-5 の 2 つのゲイン値を使用した場合、NG の推定されるゼロは 588MHz です。加算接合部での寄生容量をグランドまたはパワー プレーンに制限することは、差動と信号エンドのいずれの場合でも、基板レイアウトにおいて重要です。
THS4541 に対して、この帰還モデル、開ループ ゲイン、および位相データを使用することで、図 7-6 に示されるように、全周波数帯域の Aol および NG 曲線が描かれます。ここでは、ノイズ ゲインのピークによって交点は周波数内に引き戻されます。
閉ループ帯域幅とピークをするには、THS4541 の Aol 位相からノイズ ゲイン位相を除去して、図 7-7 に示すように、ループ周辺の合計位相を得る必要があります。
図 7-6 および 図 7-7 より 表 7-2 を使用して、これらのクロスオーバーにおけるループ ゲインのクロスオーバー周波数と位相マージンを表にすると、図 6-1 の応答形状を説明することができます。
ゲイン | DC NG (V/V) | 0dB LG (MHz) | 位相マージン (°) |
---|---|---|---|
0.1 | 1.1 | 457 | 18 |
1 | 1.94 | 380 | 41 |
2 | 2.85 | 302 | 59 |
これらのクロスオーバー (または 0dB のループ ゲイン) 周波数から、f–3dB の適切な近似値はクロスオーバー周波数と 1.6 (位相マージンが 65° 未満の場合) を掛けることにより求められます。理想的には、ループ ゲインのクロスオーバーで 65° の位相マージンを確保すると、平坦なバターワース閉ループ応答を実現できます。ゲイン 2 に対して 59° の位相マージンを設定すると、この条件におけるほぼフラットな応答は、f–3dB から 1.6 × 302MHz = 483MHz と算出され、これは測定された 500MHz の SSBW にほぼ一致しています。
アッテネータに 0.1V/V と超低位相マージンを設定すると、図 6-1 に示すようにピーク応答が高くなります。このピークは、セクション 9.2.1に示すように、帰還コンデンサと入力間の差動コンデンサを使用することで、簡単に補償できます。
ループ ゲイン分析の一部としてノイズ ゲインのゼロを考慮すると、帰還抵抗値を比較的小さくし、THS4541 の入力ピン上のレイアウト寄生容量を最小限に抑えることが、この帰還極の影響を低減するために重要であることがわかります。TINA モデルは、このような問題を予測するのに適しています (このモデルは 0.85pF の差動内部容量を考慮しています)。シミュレーションの加算接合部に外部寄生容量の推定値を追加し、応答形状をより正確に予測します。