JAJA708 September   2020 TPS55288 , TPS55288-Q1 , TPS552882 , TPS552882-Q1

 

  1.   リファレンス
  2.   商標
  3. 1概要
  4. 2設計プロセス
    1. 2.1 放射理論
    2. 2.2 昇降圧コンバータにおける広帯域 EMI の根本原因
    3. 2.3 TPS55288 昇降圧コンバータで低 EMI を実現する方法
      1. 2.3.1 クリティカル・ループの下にグランド・プレーンを追加する
      2. 2.3.2 対称型のレイアウト構成を使用する
      3. 2.3.3 周波数ディザリング機能を使用する
      4. 2.3.4 スイッチング・ノードに RC スナバを追加する
      5. 2.3.5 入力側と出力側にフィルタを追加する
  5. 3回路図とテスト結果
    1. 3.1 テスト結果
  6. 4まとめ
  7. 5関連資料

昇降圧コンバータにおける広帯域 EMI の根本原因

GUID-20200826-CA0I-MPS0-DKFD-9X33TJ2QDW0J-low.png図 2-2 クリティカル・ループを持つ昇降圧コンバータの回路図

出力段の部品、ゲート・ドライバ、VCC バイアス電源を内蔵したTPS55288 4 スイッチ昇降圧コンバータを、図 2-2 に示します。また図 2-2 には、大電流の配線、di/dt の大きいクリティカル・ループ、dv/dt の大きいスイッチング・ノードが色で示されています。

赤色の網で示されているのがループ 1 とループ 2 で、降圧レグと昇圧レグ用の 2 つのクリティカル高周波数電力ループです。これら 2 つのループの配線は長くて細いため、過剰なノイズ、スイッチング・ノードでのオーバーシュートとリンギング、寄生インダクタンスによるグランド・バウンスを引き起こす可能性があります。MOSFET のスイッチング・イベントでは、整流電流のスルーレートが 3~5A/ns を超える可能性があるため、2nH の寄生インダクタンスによって 6V の電圧スパイクが発生する可能性があります。これらのクリティカル・ループを流れるパルス電流方形波には、高調波成分が多いため、ループの面積が大きいと、放射エネルギーが大きくなり、電磁干渉の問題が発生する可能性があります。そのため、配線の長さと、ループ 1 およびループ 2 で囲まれた領域を最小化することが不可欠です。

図 2-2 のループ 3 と 4 は、降圧レグ MOSFET のゲート・ループです。ターンオンおよびターンオフ遷移中に MOSFET のゲート容量を充電および放電するために、最大で 1A 程度のピーク電流が短時間ゲート・ループを流れるため、干渉の問題も発生することがあります。このため、配線を行うときは、ループ 3 とループ 4 で囲まれる領域を最小限に抑えることも必要です。

ループ 1 とループ 2 は、最もクリティカルなループです。これらは電力ループ内にあるため、大きなパルス電力が発生します。これらの回路からは、直接の放射、隣接配線への干渉、および入力や出力のケーブルへの混入の可能性があり、重大な EMI の問題を引き起こす恐れがあります。

スイッチング・ノード SW1 と SW2 の最大電圧リンギングは、ループ 1 およびループ 2 のスイッチング速度とループ領域に対応します。ループ面積が大きいほど、スイッチング・ノードでの電圧リンギングが大きくなります。このリンギング周波数は、広帯域 EMI の中心の周波数範囲にも対応します。