JAJA731A march   2022  – may 2023 TMAG5170 , TMAG5170-Q1 , TMAG5170D-Q1 , TMAG5173-Q1 , TMAG5273

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   商標
  4. 1はじめに
  5. 2磁石の選択
    1. 2.1 配置に関する考慮事項
    2. 2.2 磁石の特性
  6. 3測定の非線形性
  7. 4機械的誤差の発生源
  8. 5シグナル・チェーン誤差
  9. 6キャリブレーション手法
  10. 7改訂履歴

シグナル・チェーン誤差

さまざまな機械的誤差に加えて、シグナル・チェーンの誤差が存在し、角度測定がさらに複雑になることがあります。これらの要因は、測定値の質とデータの使用方法に直接影響する可能性があります。TMAG5170TMAG5173-Q1TMAG5273TMAG5170D-Q1 などのリニア・ホール効果センサの場合、角度測定を設計する際に以下のパラメータを理解することをお勧めします。

感度の不均等

すでに説明したように、振幅の不一致により、出力角度が非線形になる可能性があります。適切な入力を持つセンサが配置されている場合でも、各チャネルの感度ゲイン誤差が多少異なる可能性があります。各チャネル間の小さな誤差は、入力振幅の不一致を補正するのと同じ方法で補正できます。つまり、スカラー感度ゲイン調整を適用し、2 つの出力チャネルを同じ振幅に正規化できます。

オフセット

入力換算オフセットは、デバイス出力に対する固定 DC オフセットとして現れます。これは、「オフセット」に示すように、角度誤差を直接発生させることがあります。この誤差を補正するには、回転する磁石に対して初期スイープを実行します。ピーク測定値を使用すると、あらゆるシステムで感度ゲイン誤差と入力換算オフセットの両方を最小化できます。

ノイズ

角度精度に影響を及ぼす可能性のあるもう 1 つの重要なパラメータはノイズです。RMS 入力換算ノイズ・パラメータは、1 シグマ値を表します。測定システムを検討する場合、信号対雑音比 (SNR) が可能な最良ケースの分解能に影響を及ぼします。SNR 対ピーク角度誤差をプロットする場合、最終的な精度は一般に図 5-1 に示す傾向に沿ったものになります。

GUID-20220208-SS0I-TV8Q-7SHT-NHS2DXJLNDPL-low.svg図 5-1 入力換算ノイズによる角度誤差

SNR がこのプロットの値以上でない場合、角度計算の結果として生じる誤差が不確定なもとなり、キャリブレーションによって補正できない可能性があります。

SNR の制限を克服するため、いくつかのオプションを利用できます。まず、サンプル平均化を使用して、入力ノイズをサンプル数の平方根分の 1 に減らすことができます。TMAG5170TMAG5173-Q1TMAG5273、および TMAG5170D-Q1 は、いずれも最大 32 倍の平均化を実現しており、ノイズを大幅に低減するために使用できます。これにはサンプリング時間が長くなるという欠点があり、これによって望ましくない遅延が発生し、最大サンプル・レートが制限される可能性があります。

もう 1 つのオプションは、磁石の強度またはセンサの位置を調整することです。これらのオプションにより、利用可能な磁界が増加し、測定の SNR が向上します。

量子化誤差

量子化誤差は、ADC を使用してアナログ・ホール電圧をデジタルに変換すると発生します。ADC で使用可能なビット数により、マイクロコントローラで利用可能な最小測定分解能が設定されます。任意のサンプルにおいて、標準的な最大誤差は 1/2 LSB 以下になります。例として、図 5-2 および図 5-3 に 8 ビット ADC へのフルスケール入力を使用した角度誤差と、12 ビット ADC の角度量子化誤差を示します。

GUID-20220316-SS0I-BSGK-500L-FN3VTNDZQ3SK-low.svg図 5-2 8 ビットの量子化誤差
GUID-20220316-SS0I-VJFP-DFD1-STHDJP6B8BLZ-low.svg図 5-3 12 ビットの量子化誤差

TMAG5170 には 12 ビット ADC が内蔵されており、16 ビットの出力ワード長を使用して平均化された結果を返すことができます。

伝搬遅延

磁気センシング・アプリケーションで移動ターゲットの位置を判定するには、センサの伝搬遅延を考慮することが重要です。マイクロコントローラへのフィードバックは、ある程度の時間が経過した後にマイクロコントローラで受信でき、その間も動作は中断されずに継続されます。このため、回転する磁石の測定角度には、センサの変換時間に応じて変化する固定位相遅延が生じます。

モーターの速度がわかっている場合、この情報とセンサのサンプル・レートを組み合わせて使用し、変換中の磁石の位置変化を計算できます。

TMAG5170TMAG5173-Q1TMAG5273、および TMAG5170D-Q1 では、それぞれカスタマイズ可能なサンプリング・パターンと平均化を実現できます。これにより、伝搬遅延が可変になります。タイミングの詳細については、データシートを参照してください。例として、XYX サンプル・パターンを使用した各種平均化モードで予測される遅延を図 5-4 に示します。

GUID-20220208-SS0I-M7QV-9BCN-0ZTZ3QJPK8JM-low.svg図 5-4 TMAG5170 角度位相誤差と回転速度との関係

質の高い測定を確立するための重要なステップは、確定的な測定方法を使用することです。これは、内蔵されたトリガ・モードを使用して実現できます。既知の時間で変換を開始するようトリガすると、出力結果と実際の磁石の位置を最も正確に関連付けることができます。

温度ドリフト

温度ドリフト」で説明したように、磁石の磁界は温度によって変化します。これにより、測定に関する特定の課題が発生する可能性があります。TMAG5170TMAG5173-Q1TMAG5273、および TMAG5170D-Q1 は、いずれもプログラマブルな温度補正機能を備えており、磁界強度のこれらの変化に合わせてセンサを調整できます。0.12%/C、0.2%/C、0 の設定が利用できるため、ほとんどの磁石構成に対応できます。

その他のシグナル・チェーン誤差

他の磁気オプションを検討する際には、磁気ヒステリシスやクロス軸感度など、TMAG5170TMAG5173-Q1TMAG5273TMAG5170D-Q1 には大きな影響を及ぼさない他の誤差発生源の影響も評価することが重要です。これらの要因は、統合型の磁気コンセントレータや、GMR や TMR などの磁気抵抗性センサを使用するデバイスによく見られます。

磁気ヒステリシスは、強磁性物質に磁界を印加した結果です。図 2-3 に示す動作と同様に、永久磁石からの磁界の以前の状態に応じて、コンセントレータの残留磁化が発生します。その結果、角度の測定値は磁石の以前の位置に依存し、磁石が時計回りの場合と反時計回りの場合で測定される入力には違いがあります。

クロス軸感度は、ある磁界チャネルの一部が別の軸の測定値に結合された結果です。この結果、他のチャネルの状態に依存する非線形性が生じます。この誤差を測定から除去するには、複雑なキャリブレーション・ルーチンが必要です。