システム全体を流れる電流の量から、システムがどの程度効果的に動作しているかを判定するための情報が得られます。システム動作についての基本的な情報は、電源から引き出される電流と、その動作状況について事前に定義されている予測値との比較から得られます。電流が予測されるレベルを超えている場合、システムのいずれかの要素が予測より多くの電力を消費していることを示しています。同様に、電流が予測より低い場合、システムの一部が正しく電流を受け取ってない、または切断されていることを示している可能性があります。
異常な状態を把握するために、システムのフォルト状況を診断するいくつかの方法があります。1 つの方法は、システム全体の消費電流を監視し、電源に損害を及ぼす可能性がある異常な消費を識別することです。この場合、一般に測定精度は重要ではなく、単純な警告により異常な状態を示すことが要求されます。
短絡保護として、回路を破損するレベルの電流がシステムを流れることを防止するには、ヒューズが広く使用されています。範囲外のイベントが発生すると、ヒューズが溶け、回路のパスを切断します。システムを再度正常に動作させるには、ヒューズを交換する必要があります。ヒューズへ簡単にアクセスできない場合、システムそのものを修理施設に送る必要があります。
ヒューズの寿命は、流れた電流の時間にもより、またその電流の閾値においても限界があります。時間と電流によるヒューズの応答の例を、図 1-1に示します。
異常電流が検出されたときシステム自体を保護し、フォルト状況が解消されたときにシステムが通常動作へ復帰できるようにするため、過電流保護手法がより一般的になりつつあります。この保護手法ではコンパレータを使用して、監視対象の動作電流レベルを定義済みの閾値と比較し、異常検出します。特定のアプリケーションについて必要な検出レベルは、要求される閾値がどれだけ調整可能か、閾値に許容されるマージンの量、異常電流をどれだけ迅速に検出する必要があるかなど、システム固有の変数に依存します。
INA300 は、範囲外を検出するために必要な、予測される動作閾値との比較を行う機能を持つ、電流センシングに特化したコンパレータです。
図 1-2 は、INA300 で電流センシング抵抗の両端に発生する差動電圧を測定し、ユーザーが調整可能な閾値と比較する状況を示したものです。閾値を超過すると、警告出力が LOW になります。INA300 の応答速度は、異常電流検知から最短で 10µs で出力されます。
フォルトの通知に加えて、電源または特定の負荷によってどれだけの電流が実際に閾値を超えているかの情報を提供することが必要な場合もあります。このような場合の一般的な方法は、図 1-3 に示すように、電流センシング・アンプとスタンドアロンのコンパレータを組み合わせて利用することです。
電流センシング・アンプは、抵抗の両端に発生する差動電圧を測定し、コンパレータ入力と A/D コンバータ (ADC) の両方へ出力を送信します。
INA301 と INA381 は、図 1-4 に示すように、電流センシング・アンプ (測定された入力電流に比例する電圧出力信号を出力) と、オンボードのコンパレータ (過電流検出用) の両方を内蔵したデバイスです。
電流の情報と、異常検知があるため、システムは動作状況に基づいて複数の監視および保護手法が活用できます。このデバイスで使用される手法の 1 つは、異常を検知した際のアラート機能です。異常状況が検出され、警告ピンがアサートされると、システムはアナログ出力電圧の監視を始め、それに応じてシステムが応答できるようになります。システムは一般に、システムの性能レベルを低下させる、または完全にシャットダウンする、または異常電流がさらに重大なシステム上の懸念になるかどうかを判定するため監視を続けるという方法で対応します。比例出力電圧とオンボードの過電流検出機能の両方があることから、システムは必要な時だけ電流情報の監視を行えばよいため、システム・リソースを最適化できます。過電流トリップ閾値を設定する際の柔軟性を高めるために過電流コンパレータの両方の入力が直接アクセスできるようになっていることを除いて、INA381 は INA301 と同等の機能を備えています。
INA301 は電流センシング・アンプとオンボード・コンパレータの両方を内蔵したものです。INA301 アンプは信号の帯域幅が 450kHz と小さく、ゲインは 100 固定で (ゲインが 20 および 50 の製品もあります)、最大入力オフセット電圧は 35µV です。アンプは最大ゲイン誤差仕様が 0.2% で、異常な状況を高速に検出できます。INA301 は入力を正確に測定でき、過電流に迅速に応答できます。入力信号の測定、ユーザーの選択した閾値との比較、コンパレータの出力のアサートを含めた応答時間は 1µs 未満です。
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