JAJT325 May 2024 AFE88101 , DAC161S997 , DAC8551 , LM74610-Q1 , TVS3301
太陽光発電 (PV) システムでは、モジュール レベルのパワー エレクトロニクス (MLPE) により、特定の条件下、特に日陰での発電性能が改善されます。かつては費用のかかる特殊なカテゴリーと考えられていた MLPE は、今では太陽光業界で最も急速に成長している市場セグメントの一つです。ソーラー電力オプティマイザは、PV パネルの電力出力を最適化して効率を高める MLPE の一種です。
従来型のソーラー電力オプティマイザは、バイパス回路に P-N 接合ダイオードまたはショットキー ダイオードを使用しています。ダイオードに大電流が流れると、比較的高い順方向電圧降下が原因で、高い電力損失によって熱に関する重大な問題が発生する可能性があります。改善された方法では、ダイオードよりも電圧降下が小さい金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ (MOSFET) を使用することで、高い電力損失を克服しています。
さらに、ソーラー オプティマイザは、特定の電力レベルで導通損失を低減し、システム コストを削減することで効率向上を実現したため、2 枚の PV パネルを直列接続した場合の最大 150V の過渡電圧など、より高い入力電圧に対応できるようになりました。この記事では、フローティング ゲートの理想ダイオード コントローラを使用した、スケーラブルなバイパス回路ソリューションについて説明します。この回路は、ソーラー電力オプティマイザ、緊急遮断機能、PV ジャンクション ボックスなど、太陽光発電アプリケーションで広範囲の電圧をサポートするバイパス スイッチに関連する課題を解決します。
図 1 に、個々の PV パネルにソーラー電力オプティマイザを取り付けた PV システムを示します。
電力オプティマイザは、マイクロ インバータとストリング インバータの中間の選択肢と考えることができます。マイクロ インバータのように個々のソーラーパネルに取り付けられますが、その機能は DC 電力を AC 電力に変換するというものではありません。電力オプティマイザは、各ソーラー パネルの最大出力をリアルタイムで追跡し、出力電圧をインバータに送る前にレギュレートします。したがって、インバータはより多くの電力を処理することができます。その結果、太陽光に対する向きや日陰、1 枚または複数枚のパネルの損傷に影響されることなく、すべてのソーラー パネルで発電性能が最適化されます。各 PV パネルに電力オプティマイザを取り付けた太陽光発電システムは、個々のパネルにオプティマイザを使用しない太陽光発電システムと比較して、効率が 20%~30% 向上します。
大容量のソーラー インバータでは、複数の PV パネルを直列接続することで、インバータ入力に供給される高い DC 入力電圧を実現できます。図 2 に示すように、オプティマイザを対応する PV パネルに配置すると、最も高い効率が得られます。PV ストリングは、実際にはオプティマイザの出力によって接続されます。ソーラー パネルが 1 枚でも故障すると、すべての PV パネルが直列接続されているため、PV ストリング電圧が低下する可能性があります。出力バイパス回路により、損傷したオプティマイザの周囲を迂回する並列パスがストリング電流に提供されます。図 2 に、いずれかの PV パネルが損傷した場合のバイパス機能の仕組みを示します。
通常、バイパス回路には 2 種類のソリューションがあります。図 3 に、P-N 接合ダイオードまたはショットキー ダイオードを使用してバイパス機能を実現する一般的な方法を示します。低コストで使いやすく、選択したダイオードで非常に高い逆電圧を得ることができます。ただし、順方向電圧降下が高い (0.5V~1V) ため、電力損失が大きくなり、プリント基板が大型化するいう欠点があります。バイパス ダイオード ソリューションの欠点を克服するためには、電圧降下が大幅に低く、電力損失が低い (RDS(on) が低いため) N チャネル MOSFET を使用することが選択肢となります。ただし、次のような欠点もあります。
MCU ベースのオン / オフ制御方式の欠点に対処するインテリジェントな方法としては、外部の介入なしで自律的に動作するスタンドアロンの MOSFET コントローラの使用が挙げられます。テキサス・インスツルメンツのフローティング ゲート理想ダイオード コントローラ、 LM74610-Q1 ファミリは、外付けの N チャネル MOSFET を制御して直列ダイオードの動作をエミュレートすることで、スタンドアロンの低損失バイパス スイッチ ソリューションを実現しています。これらのコントローラはフローティング ゲート ドライブ アーキテクチャを採用しており、MOSFET のボディ ダイオードの順方向電圧降下 (約 0.5V) と同程度の低い入力電圧で動作できます。
しかしながら、ソーラー インバータの電力レベルが高くなり、より高電圧の PV パネルの採用が増えるにつれて、バイパス回路には従来のソリューションよりも優れたソリューションを実現するためのいくつかの要件が求められます。複数のプラットフォームで拡張性を持たせるために、20V~150V の PV パネル電圧で動作し、他の回路から独立していることが求められます。