トラクション・インバータは、電気自動車 (EV) のドライブトレイン・システムの中核です。そのため、インバータは、EV が世界中で採用されるうえで重要な役割を果たします。トラクション・モータは、バッテリまたはジェネレータからの DC 電力を AC 電力に変換して、永久磁石同期型モータ (PMSM)、誘導モータ (IM)、外部の励起同期モータ (EESM)、スイッチト・リラクタンス・モータ (SRM) などのトラクション・ドライブ・モータに電力を供給することで優れたトルクと加速を実現します。またトラクション・インバータはモータからの再生エネルギーを変換し、車両が惰行中またはブレーキ中にバッテリを再充電します。
トラクション・インバータの性能を測定する際には、設計上のいくつかの重要な優先事項とトレードオフを考慮する必要があります。
- 安全機能とセキュリティ機能の設計は通常、ISO 26262 または EVITA (e-safety vehicle intrusion protected applications) のプロセスに準拠しています。このプロセスには、安全診断、システム・レベルの故障モードと影響の分析、故障モード、影響、診断分析、ハードウェア・セキュリティ・モジュール (HSM) が含まれます。
- 重量と電力密度 – ワイド・バンド・ギャップ・スイッチとパワートレインの統合は、電力密度の高いインバータ設計を可能にする重要なテクノロジーです。OEM のインバータ電力密度の目標は、たとえば米国市場では 2025 年まで 100kW/L を継続しています。SiC を使用すると、800V の DC バス電圧を実現し、電流定格とワイヤ・ハーネスを低減できます。高速制御ループを搭載したマイコンを使用すると、高速で軽量なモータが使用でき、DC-DCコンバータを内蔵したインバータなどのパワートレインを統合することができます。
- 効率 – システムの効率には、回生ブレーキ・モードでのトラクション・インバータの効率、モータの効率、インバータの効率が含まれます。
- 性能と信頼性 – インバータ・システムの性能は、モータのトルク制御、電流センシング・ループ、モータのトルク過渡応答によって測定されます。信頼性には、パワー・モジュールの信頼性、モータの信頼性、絶縁などが含まれます。
- システム・コスト – 電気機器やワイヤ・ハーネス以外の主なコンポーネントは以下のとおりです。
- EMI フィルタ
- DC リンク・コンデンサ
- バスバー
- マイコンと制御エレクトロニクス
- パワー・モジュールとドライブ・ステージ・エレクトロニクス
- 電流センサ
- インバータのハウジングと冷却